2018 年 18 巻 1 号 p. 1_104-1_121
平成25年6月の災害対策基本法の一部改正により,災害発生時の効率的な避難支援の実現のため,避難行動要支援者の名簿の作成義務化が規定され,さらなる避難支援の発展が期待されている.本研究では,現実的かつ具体的な避難支援計画へ向け,国民健康保険データベース(KDB)を用いて避難行動要支援者の中でも特に自力での避難が困難である重大な疾患を持つ患者の実態を明らかにすることを目的とした.分析手法としては,J-SHIS地震ハザードステーションや,建物の全半壊率曲線等を活用して,大地震の発生を想定した際の建物被害の把握と利用可能避難施設の抽出を行う.国民健康保険データベース(KDB)によって得られた重大な疾患を持つ患者の実態と災害時の利用可能避難施設の比較の結果,重大な疾患を持つ患者の避難施設であると考えられる病院の病床数が不足するケースが存在することが明らかとなった.