日本地震工学会論文集
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論文
S波部分上下動の地盤の地震動応答特性に入射波動場が及ぼす影響
吉田 邦一宮腰 研
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2019 年 19 巻 4 号 p. 4_52-4_70

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抄録

S波部分上下動を対象としたはぎ取り解析では,P波鉛直入射あるいはS波斜め入射を仮定して,一次元成層構造を用いた表層地盤の地震動応答が計算される.本論文では,モデル計算によりP波鉛直入射あるいはS波斜め入射により求められる上下動の地震動の差異を示し,さらに実観測記録を対象に地震動の再現と,はぎ取り解析を試みた.まず,地表と堆積層中の地中に地震観測点がある鉛直アレーを対象に,地中地震計より浅部の構造が同じで,深部の構造が異なる地震波速度構造モデルについて,地表/地中スペクトル比をP波鉛直入射あるいはS波斜め入射それぞれについて計算した.その結果,地震基盤と堆積層のコントラストの大きな速度構造モデルではスペクトル比の差が小さかったものの,深さとともに徐々に速度が変化するような速度構造モデルでは大きく異なっていた.この結果は,深部の地下構造によっては,上下動はS波斜め入射に基づき計算する必要がある場合があることを示している.さらに,実際の観測点(KiK-net SRCH08砂川)で得られている地殻内地震のS波部分の上下動でも,P波鉛直入射よりもS波斜め入射にもとづく理論地表/地中スペクトル比の方が観測スペクトル比を良好に説明し,はぎ取り解析結果も良好な結果を得た.

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© 2019 公益社団法人 日本地震工学会
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