2019 年 19 巻 5 号 p. 5_423-5_439
本研究では,これまでに考慮されて来なかった「地震による複合災害の影響」を議論する.すなわち,室内散乱や家屋の倒壊により避難行動を行えない「閉じ込め」状態の被災者を考慮し,地震津波発災時の人的被害予測式を提案した.また,北海道釧路市において本式を用いて被害予測を行い,地震発生と同時に避難を開始したとしても閉じ込め等により約2万人の住人が津波により死亡するというシナリオを明らかにした.更にこの結果に加え,少子高齢化の社会現象を踏まえ釧路市の根本的防災対策としてより安全な都市形態の一例を提案することを目指した.コーホートモデルによる将来人口予測を行ったうえで住民による自助・共助そして自治体による公助に伴う減災効果の評価を行い,今後あるべき減災戦略の在り方を考察する.