2019 年 19 巻 5 号 p. 5_96-5_110
平均応力降下量の算定式は巨視的断層パラメータと微視的断層パラメータを力学モデルで結びつける重要な式であるにもかかわらず,これまで十分な検討が行われてこなかった.そこで,本論文では,潜在円形クラックの式を含むいくつかの平均応力降下量の算定式を,地震モーメントおよびアスペリティの面積と応力降下量を用いて調べた.その結果,地震モーメントと震源断層面積との既存の経験的関係式との比較から,地表断層破壊をともなわない内陸地殻内およびプレート境界の小地震には潜在円形クラックの式が適用できるが,2016年熊本地震や2011年東北地方太平洋沖地震のように,地表断層破壊をともなう内陸地殻内地震およびプレート境界地震には潜在円形クラックの式以外の式の適用がふさわしいことが示唆された.