2021 年 21 巻 5 号 p. 5_58-5_78
RC造建築物の地震後の修復性向上のためには,部材の損傷範囲は小さい方が望ましい.損傷範囲を抑制する方法の一つとして主筋の付着除去がある.主筋の付着を除去したRC梁部材では,付着を除去しない通常付着性状の梁部材に比べて,損傷範囲を抑制できるものの,耐力やエネルギ吸収性能が低下する.本研究では,復元力特性を確保しつつ,損傷範囲を抑制するために,主筋の付着を除去し,そのスパン中央部は定着した逆対称曲げを受けるヒンジ位置保証型RC梁の力学挙動を検討した.まず,付着を除去する主筋の位置,スパン中央部の主筋の定着方法,スラブの有無をパラメータとしたRC梁部材の有限要素解析を行った.解析から,四隅のみの主筋の付着を除去し,スパン中央部で鋼板により定着する方法を用いることで,通常付着性状の梁と同等の復元力特性を確保でき,且つ損傷範囲を抑制できることが分かった.次いで,その付着除去,中央部定着方法を採用したスラブ付きRC梁の実験を行った.実験ではヒンジ想定位置にひび割れが集中し,損傷範囲を抑制できた.梁の残留最大ひび割れ幅は,小規模な補修で建築物を継続使用できる損傷であった.