日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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論文
強震記録の上下動成分に見られる見かけの残留速度Vnonの生成要因
野津 厚
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2023 年 23 巻 2 号 p. 2_1-2_22

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抄録

近年観測されている大振幅の強震記録において,加速度波形の上下動成分を時間領域で積分すると負の残留速度Vnonが生じるとの指摘に着目し,その生成要因として,水平慣性力作用時に慣性力の方向にセンサーが一時的に傾斜し,水平慣性力にsinθ(θは傾斜角)を乗じたものが上下方向のセンサーに感知されるというメカニズムを新たに提案した.センサーの傾斜は地盤のせん断変形または小屋の傾斜により生じる.このメカニズムに従って発生する上下方向の見かけの残留速度は必ず負となる.既往の研究でVnonの値が大きいことが指摘されている記録のうち,小屋の影響が比較的小さいと考えられるK-NETの記録を対象に,観測記録から計算されるVnonの値を上記のメカニズムでオーダー的に説明できることを示した.

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© 2023 公益社団法人 日本地震工学会
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