日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
23 巻, 2 号
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論文
  • 野津 厚
    2023 年 23 巻 2 号 p. 2_1-2_22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    近年観測されている大振幅の強震記録において,加速度波形の上下動成分を時間領域で積分すると負の残留速度Vnonが生じるとの指摘に着目し,その生成要因として,水平慣性力作用時に慣性力の方向にセンサーが一時的に傾斜し,水平慣性力にsinθ(θは傾斜角)を乗じたものが上下方向のセンサーに感知されるというメカニズムを新たに提案した.センサーの傾斜は地盤のせん断変形または小屋の傾斜により生じる.このメカニズムに従って発生する上下方向の見かけの残留速度は必ず負となる.既往の研究でVnonの値が大きいことが指摘されている記録のうち,小屋の影響が比較的小さいと考えられるK-NETの記録を対象に,観測記録から計算されるVnonの値を上記のメカニズムでオーダー的に説明できることを示した.

  • 緒方 太郎, 鍬田 泰子, 大室 秀樹, 長谷川 延広
    2023 年 23 巻 2 号 p. 2_23-2_39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,小口径の埋設管を対象とした水平載荷試験を実施し,実験結果から設計に用いる地盤ばね特性を評価するとともに,地盤反力係数の推定式を提案した.水平載荷試験では,土槽内に締固めた湿潤砂中に鋼管を埋設し,鋼管端部に鋼棒を固定してそれを外部から静的に載荷し,荷重と変位の関係を求めた.それらの関係をWeibull関数で近似し,地盤反力係数の正規化変位量依存性,載荷幅依存性および埋設深さ依存性についてそれぞれ評価した.さらに地盤の降伏を考慮した地盤ばね特性として,最大地盤反力と弾完全塑性モデルによる降伏変位,ならびに降伏地盤反力係数との弾性地盤反力係数の関係を明らかにした.これらの結果を用い,既往の平板載荷試験から求まる地盤反力係数の補正式を構築し,その妥当性を重回帰分析から検証した.

  • 岩田 直泰, 森脇 美沙, 野田 俊太, 松林 弘智, 山本 俊六
    2023 年 23 巻 2 号 p. 2_40-2_57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    地震時において,鉄道では必要に応じて列車を素早く停止し,沿線で観測された地震動に基づき施設の点検が実施される.安全確保に向けた点検には多大な時間を要する場合があり,近年,地震後における列車の早期運転再開が課題となっている.この際,沿線に設置された地震計による離散的な観測データの他に,沿線の地震動を推定により連続的に素早く把握できれば,点検区間の適正化が可能となる.しかし,鉄道の地震後の運転再開判断に対し,推定データの実務使用は一部の鉄道事業者を除き十分には進んでいない.これは,推定誤差の扱いが定まっていないことが一因であると考えられる.本研究では,実務における推定誤差の扱いの考え方を示した上で,観測データと推定データを融合した鉄道沿線地震動推定手法を提案する.さらに,鉄道事業者の地震計データの導入を想定した,提案手法による鉄道沿線地震動の推定事例を仮想の鉄道路線に対して示す.

報告
  • 内田 淳, 大井 昌弘, 大内 芳弥, 本橋 恵三
    2023 年 23 巻 2 号 p. 2_58-2_70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    1995年兵庫県南部地震を契機に,わが国における強震観測網は飛躍的に整備拡大され,現在に至っている例えば1).震度計を含む強震計の機能は,センサ部,AD変換部,演算部,通信部の4つに大きく分けられ,技術発展に伴って様々な改良が行われてきた.地震動を電気信号に変換するセンサ部は,従来からサーボ型加速度計が用いられてきたが,AD変換部,演算部,通信部の急速な技術発展とそれに伴う小型化,低価格化が実現されてきたが,センサ部は大きな変化,とりわけ低価格化は見られなかった.一方,自動車などに搭載される衝撃センサやスマートフォンには加速度センサが搭載されている.これらの加速度センサは,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれるもので機械要素部品や電子回路を微細加工技術によって集積化したデバイスであり,超小型で低価格,計測範囲が広いという特徴を持つ反面,分解能は低く,地震観測として1×10-2 m/s2程度の振動計測に使えるものはほとんどなかった.しかし,最近,強震計として利用できる非常に低ノイズのMEMS加速度センサが開発・販売されるようになったため,MEMS加速度センサを用いたMEMS型計測震度計の開発を行い,高層建物のEPS室内や地下階において無線によるデータ転送の評価を実施した.

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