2024 年 24 巻 1 号 p. 1_92-1_123
芝浦工業大学豊洲キャンパス内の建築構造物の基礎スラブおよび支持層内(GL−40 m)の地震記録に対し,NIOM解析を用いて基礎スラブ下端からGL−40 mまでの実体波の伝播時間を推定した.その結果,実体波の伝播時間には系統的なずれと地震毎のばらつきが見られたが,このばらつきについては地震波を平面波と仮定した場合の上下の地震計を通る平面波の波面間の距離に関係していることを示した.一方,ボーリングデータに基づく実体波の伝播時間とNIOM解析に基づく伝播時間の平均値は比較的良い一致を示し,上述のばらつきは平均化処理である程度除去できる可能があることが分かった.次に,2011年東北地方太平沖地震の観測記録にNIOM解析を適用し,伝播時間の変化から地盤の非線形特性を検討した.その結果,地盤に生じた最大せん断歪は5~6×10-4程度で,せん断剛性比G/G0は0.8~0.6程度に低下していた可能性があることを指摘した.