日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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論文
  • 護 雅史, 藤内 繁明, 小橋 知季, 河合 良道, 金森 愛咲美, 飛田 潤
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_1-1_17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    本論では,実存する3階建てスチールハウスを対象として,2009年より実施してきている地震観測で得られた観測記録に基づき,対象建物の地震時応答性状について詳細な分析を行った.また,最近実施した対象建物の常時微動計測結果との比較により,微動時と地震時での振動性状の比較を行った.その結果,地震や経年変化の影響と考えられる固有振動数の低下,減衰定数の増加が認められた.加えて,1地震中でも特に振幅が大きい時間帯で固有振動数が低下しその後回復すること,微動レベルでは,地震時に比べて,固有振動数は高い一方で,減衰定数は若干小さくなっていること等が明らかとなった.

  • 野村 友仁, 鈴木 崇伸
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_18-1_32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    地表断層変位など地盤変状を受ける埋設管の耐震計算において地盤反力特性の非線形性を適切に設定することが重要である.埋設管関連の耐震設計指針・基準では地盤反力特性の非線形性は主に実験データに基づく場合が多いが,近年は地盤の解析技術が進展して大変形領域まで弾塑性解析が可能になった.解析により地盤反力を設定できればより合理的な埋設管の設計が可能になる.そこで本稿は埋設管の地盤反力実験結果を再現する2次元弾塑性解析を行った結果に基づき,力学的な特徴を分析した結果を報告している.またFEM解析の結果に基づき,降伏時の地盤反力を近似的に計算する方法について考察している.

  • 平井 敬, 高橋 広人
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_33-1_53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    地震動に対する自動車の挙動を詳細に把握するために,入力レベルを広い範囲で変化させながら自動車の加振実験を行った.その結果,応答特性は入力レベルによって変動すること,自動車は周期1~2 sの範囲でおおむね平坦な振動特性を持つこと,車両上で記録された加速度波形をもとに地動の計測震度等の地震動強さ指標を推定できることが明らかになった.これらの結果から,自動車を媒体とした地震観測の可能性が示された.

  • 鬼頭 直, 村田 耕一, 張 学磊, 根本 信, 中村 洋光, 藤原 広行
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_54-1_72
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    南海トラフ地震に対して効率的な津波対策を促進するため,想定される最大クラスを含む南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価に基づいた確率論的津波リスク評価を試みた.まず,津波対策が優先されるべき地域を特定するため,南海トラフ地震が発生した際に,現況の堤防が浸水被害を防御できる確率(非超過確率)を評価した.次に,この現況堤防の評価をもとに,対象地区として愛媛県宇和島市を選定し,現況と嵩上げの堤防条件で確率論的浸水ハザードマップを試作した.さらに,藤間・樋渡(2013)の方法に基づき,堤防嵩上げによる費用便益分析を実施し,堤防嵩上げの有効性(B/C > 1)を確認した.今後,南海トラフ地震等を対象とした津波対策を推進するため,各自治体において,本研究で提案する浸水リスク評価手法の利活用が期待される.

報告
  • 赤羽 日向, 八百山 太郎, 糸井 達哉
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_73-1_91
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    地震動予測では,サイト固有の地盤特性を考慮した地震動評価を行うことが求められるが,強震記録の数が十分でない中でどのように実現するかが課題である.本研究では多出力ガウス過程回帰を用いることで周辺サイトの観測記録による学習も同時に行い,少ない記録からサイト固有の地震動評価手法を構築することを試みる.模擬的に生成した地震動記録に対して,地表面最大速度を地震動指標とした学習を行うことで,サイト数とサイトごとの記録数の影響を検討する.また,地殻内地震の観測記録に適用し,その結果を分析することで回帰から得られるサイト固有の地震動特性について議論する.

  • 紺野 克昭
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_92-1_123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    芝浦工業大学豊洲キャンパス内の建築構造物の基礎スラブおよび支持層内(GL−40 m)の地震記録に対し,NIOM解析を用いて基礎スラブ下端からGL−40 mまでの実体波の伝播時間を推定した.その結果,実体波の伝播時間には系統的なずれと地震毎のばらつきが見られたが,このばらつきについては地震波を平面波と仮定した場合の上下の地震計を通る平面波の波面間の距離に関係していることを示した.一方,ボーリングデータに基づく実体波の伝播時間とNIOM解析に基づく伝播時間の平均値は比較的良い一致を示し,上述のばらつきは平均化処理である程度除去できる可能があることが分かった.次に,2011年東北地方太平沖地震の観測記録にNIOM解析を適用し,伝播時間の変化から地盤の非線形特性を検討した.その結果,地盤に生じた最大せん断歪は5~6×10-4程度で,せん断剛性比G/G0は0.8~0.6程度に低下していた可能性があることを指摘した.

  • —地震動の応答スペクトルに関する地震動予測地図に向けて—
    土肥 裕史, 重野 伸昭, 森川 信之, 藤原 広行, 能島 暢呂, 岩田 知孝
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_124-1_147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    地震による被害の軽減に資することを目的として,地震調査研究推進本部地震調査委員会は全国地震動予測地図を公表し,随時更新している.全国地震動予測地図は地震動指標を震度で表現しているが,諸外国では応答スペクトルを用いた地震動予測地図が普及しており,耐震設計等の工学的利活用が進んでいる.こうした状況を踏まえ,地震調査委員会強震動評価部会は工学的利活用をはじめとする様々なニーズを踏まえた成果のあり方や利活用等の検討に資することを目的として,「応答スペクトルに関する地震動ハザード評価(試作版)」を公表した.本稿では,試作版における評価の位置づけ,地震動予測式の選定,評価条件,試算結果,利活用および今後の課題について報告する.応答スペクトルに関する地震動ハザード評価が進むことによって,確率レベルに応じた耐震設計や防災計画などの基礎資料として利活用されることが考えられる.試作版をもとに,防災関係者,研究者,建設産業関係者等も含めて広く利活用について議論され,我が国における応答スペクトルに関する地震動ハザード評価の進展が期待される.

  • 汐満 将史, 中澤 駿佑, 境 有紀, 松井 貴宏, 村嶋 美波, 江口 直希
    2024 年 24 巻 1 号 p. 1_148-1_177
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    2021年2月13日に発生した福島県沖の地震において,震度6強を記録したすべて,震度6弱を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外装材,屋根葺き材,ガラスの被害といった,軽微な被害は見られたが,全壊・大破といった大きな被害を受けた建物は見られなかった.観測された強震記録の性質と建物被害の関係を検証したところ,発生した地震動の多くは計測震度と相関がある周期1秒以下の短周期が卓越していた一方,建物の大きな被害と相関がある周期1–1.5秒の成分は小さかった.そのため,震度6弱以上といった大きな震度を記録したにも関わらず,観測点周辺で大きな被害を受けた建物が見られなかったと考えられる.

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