2024 年 24 巻 4 号 p. 4_67-4_75
既存建物に耐震補強として鉄筋コンクリート造耐震壁を増設する際,コンクリートの代わりに,施工時に建物の居住性や使用性を損なわないモルタルでの施工を求められる場合がある.しかし,モルタルはコンクリートと比較して,乾燥収縮量が大きく,ひび割れ界面でのせん断応力伝達特性が異なる.そのため,モルタルを使用した耐震壁は,鉄筋コンクリート造耐震壁と性能が異なる.本検討では,鉄筋モルタル造耐震壁の構造性能評価手法を確立するための知見を得ることを目的とし,鉄筋モルタル造耐震壁の静的載荷実験と,実験を模擬した三次元応力場での解析を行った.解析では,モルタルの性質を再現するために,加力前に壁に初期ひずみを導入し,材料モデルを調整した.その結果,実験で計測された鉄筋モルタル造耐震壁の耐力や剛性を,解析によって適切に評価することが出来た.