日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
24 巻, 4 号
特集号「第16回日本地震工学シンポジウム」その1
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
論文
  • 翠川 三郎
    2024 年24 巻4 号 p. 4_2-4_11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    首都圏に莫大な被害を与えた1923年関東地震の際の各地での地震動の強さを理解するため,関東地震の震度分布図を収集した.その根拠となる資料から,1)速報的なもの,2)実地調査によるもの,3)木造家屋被害によるもの,4)中央気象台の震度等によるものに分類して,その特徴を整理して違いについて考察した.その上で,木造家屋全潰率に基づく震度VIの範囲の見直しの試案を示した.

  • 松本 雄馬, 八百山 太郎, 李 尚元, 肥田 剛典, 糸井 達哉
    2024 年24 巻4 号 p. 4_12-4_25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    地震動の時刻歴データをベースとした確率論的地震ハザード評価に向けて,地震動の3成分加速度時刻歴データを直接生成可能な確率モデル構築を試みる.近年,深層学習を用いた生成モデルが,その性能の高さから大きな注目を集めている.本論文では,Generative Adversarial Networksと呼ばれる深層生成モデルを用いて,地殻内地震を対象とした強震観測記録の学習を行った.学習後のモデルが,マグニチュードや距離の条件と整合する地震動時刻歴データを生成可能であり,かつ観測記録の分布を近似した確率モデルとなっていることを示した.また,生成した地震動の分布が既往の地震動予測式と概ね対応することを示した.

  • 森川 康平, 川崎 佑磨, 野村 泰稔, 伊津野 和行
    2024 年24 巻4 号 p. 4_26-4_35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    大地震で橋梁のゴム支承が破断した場合には支承交換が行われるが,その近傍の破断しなかったゴム支承の内部に損傷があるかどうかは目視点検のみで判断することが難しい.そこで本研究では,積層ゴム支承内における弾性波の伝播状況を数値解析により明らかにし,そのデータを用いて機械学習の異常検知技術による損傷検知を行った.まず,損傷を有しないモデルに対して衝撃弾性波法を適用して得られた観測波形を健全データとして機械学習させた.そのデータセットを利用して異常検知法のOne-Class Support Vector Machineを用いることにより,損傷として内部空隙を設定したモデルから得られた観測波を異常値と判定することができ,ゴム支承内部の空隙が検知可能であることを示した.

  • ―1940年神威岬沖地震の記録読取り―
    古村 美津子, 松浦 律子
    2024 年24 巻4 号 p. 4_36-4_45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    Furumura et al.(2023)は気象庁強震計の煤書地震記象紙から波形を自動読取りするConvolutional Neural Networkモデルを構築した.ここではこのCNNモデルの実用性を確認するため,彼らが学習に使用していない1940年神威岬沖の地震の煤書強震記録のスキャン画像にCNNモデルを適用して波形の自動読取りを行い,手動読取り結果と比較する.一部修正が必要な場合があるものの,多くの場合,自動読取り結果は手動読取り値と良い一致を示しており,CNNモデルの利用によってアナログ波形の数値化の手間を大幅に省力化できることを示した.

  • 米澤 健次
    2024 年24 巻4 号 p. 4_46-4_56
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    高強度鉄筋を用いてRC柱とS梁を接合する構法における十字形架構,ト形架構,T形架構,およびL形架構の試験体を用いた既往の実験を対象に非線形FEM解析を実施した.解析と実験結果の比較により,本構法の構造性能に対するFEM解析の精度を検証し,ここで用いた解析手法および材料モデルにより,本構法の非線形挙動を良好な精度で再現できることを確認した.さらに,実験データを補うために,FEM解析により仮想試験体を用いた数値実験を行い,本構法の引張軸力下の外柱接合部の構造性能および段差梁が取り付く内柱梁接合部のせん断耐力を解析的に検討した.

  • 松川 和人, 芳賀 勇治, 中埜 良昭
    2024 年24 巻4 号 p. 4_57-4_66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    本論文では,1960~70年代に建設された鉄骨造小規模住宅で見られる柱梁接合部のディテールを再現した試験体の構造実験と,耐震性能評価を行った.接合部の特徴は,1) H形鋼の梁が全周隅肉溶接でH形鋼の柱に接続されている,2) ダイアフラムがパネルゾーンに存在しない,であり,特に2) によって本邦の耐震診断基準では適用範囲外とされており,診断実務では評価困難となる場合がある.そこで本研究では,隅肉溶接のサイズをパラメータとした,ダイアフラムの無い柱梁接合部試験体4体の静的加力実験を実施し,強度・剛性や変形能力を評価した.

  • 中田 幹久, 萩尾 浩也, 栗田 康平
    2024 年24 巻4 号 p. 4_67-4_75
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    既存建物に耐震補強として鉄筋コンクリート造耐震壁を増設する際,コンクリートの代わりに,施工時に建物の居住性や使用性を損なわないモルタルでの施工を求められる場合がある.しかし,モルタルはコンクリートと比較して,乾燥収縮量が大きく,ひび割れ界面でのせん断応力伝達特性が異なる.そのため,モルタルを使用した耐震壁は,鉄筋コンクリート造耐震壁と性能が異なる.本検討では,鉄筋モルタル造耐震壁の構造性能評価手法を確立するための知見を得ることを目的とし,鉄筋モルタル造耐震壁の静的載荷実験と,実験を模擬した三次元応力場での解析を行った.解析では,モルタルの性質を再現するために,加力前に壁に初期ひずみを導入し,材料モデルを調整した.その結果,実験で計測された鉄筋モルタル造耐震壁の耐力や剛性を,解析によって適切に評価することが出来た.

  • 石原 直
    2024 年24 巻4 号 p. 4_76-4_84
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    天井等の非構造部材に代表される2次系の耐震設計では,偏心による構造躯体のねじれ振動の影響は明示的には考慮されていない.ねじれ振動によって2次系の地震時慣性力は大きくなりうるが,増幅の程度等は十分に明らかにされていない.本稿では,2次系に対する建物のねじれ振動の影響を把握するため,単層の1軸偏心建物を対象とした床応答スペクトルについて検討する.結果から,偏心なしに比べて床応答スペクトルは大きくなるが,その最大値は偏心なしの約1.2倍程度で,偏心率が0.1より大きくなると最大値はほぼ一定となること,などが示される.

  • 鈴木 乃亜, 秋山 充良, 布施 柚起, 青木 康貴, 越村 俊一
    2024 年24 巻4 号 p. 4_85-4_95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震の津波被害を受け,緊急避難先として津波避難タワーが建設されている.設置場所の検討時には最大規模の津波が想定されるが,地震断層の動きの評価に伴う不確定性により津波到達の予測時間は確率的に変動するため,その想定が安全側の解を与えるとは限らない.本研究では,ハザード評価,脆弱性評価,あるいは人の避難行動における不確定性を考慮した確率論的リスク算定のアプローチにより津波人的被害者の予測手順を提示し,それに基づき防災予算の制約下で避難タワーの設置場所を決定する手法を提案する.ケーススタディでは,南海トラフ地震の影響域に提案手法を適用し,津波ハザード評価手法の違いが避難タワーの配置に及ぼす影響を考察した.

  • 坂井 公俊, 和田 一範, 豊岡 亮洋
    2024 年24 巻4 号 p. 4_96-4_108
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    地震発生後の復旧時間を照査指標とした鉄道構造物の復旧性照査手法を開発した.提案手法は,設計地震動として「設計耐用期間内に想定される幅広い特性を有する多数の地震動」を用い,地震後の早期復旧に直接関係する「復旧時間を照査指標」としている.さらに,提案手法をより実務的に実施可能とするため,あらかじめ多様な条件で計算を実施するとともに,同一の復旧時間となる構造物条件をノモグラムで表示する手法を提案した.提案手法を用いることで,従来の耐震設計と同様の手順で,復旧しやすい構造物の構築が可能となり,結果として地震後の復旧時間の短縮が期待される.

  • 小野 耕平, 岡 大二朗, 岡村 未対
    2024 年24 巻4 号 p. 4_109-4_118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    液状化は幅広い粒度の材料で発生する可能性があるものの,粒度の差異は体積変化特性だけでなく,透水性に応じて変化する部分排水効果にも関係するため,液状化強度特性の理解を複雑化している.体積ひずみを指標とした間隙水圧発生モデルを用いることにより,体積ひずみに関係する両者の影響を同じ枠組みの中で評価できると期待される.そこで本研究では,粒度が異なる2種類の砂を用いて三軸試験を実施し,間隙水圧発生モデルを用いて液状化強度の違いを評価した.三軸試験とモデルの予測結果から,砂の塑性体積ひずみと弾性係数によって液状化強度の違いを説明することができた.また,地盤の透水性を変化させた遠心模型実験を実施し,部分排水効果による見かけの液状化強度の増加について検証した.見かけの液状化強度の増加率は,排水に伴う体積ひずみにより評価できることが示された.

  • 沢津橋 雅裕, 石丸 真, 平賀 健史, 鈴木 達也, 及川 兼司, 横田 克哉
    2024 年24 巻4 号 p. 4_119-4_131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    原子力発電所の耐震性検討においては,従来は液状化しないと考えられてきた洪積砂に対しても液状化評価が求められている.本論文では,砂質土にセメントを添加することで固結した硬質な洪積砂の液状化特性を再現した模擬洪積砂を用いて,非排水繰返し中空ねじり試験,開水路支持地盤を対象とした遠心力模型実験,ならびにその数値解析を実施した.過剰間隙水圧比が1に到達する前にせん断破壊する天然の洪積砂の特徴を再現した模擬洪積砂では,過剰間隙水圧比が0.5程度にとどまる場合は,全応力モデルによっても遠心力模型実験における地盤応答および開水路の加速度と軸ひずみを同等あるいは包絡する形で再現できることが分かった.

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