日本地震工学会論文集
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論文
懸架型パラレルリンク機構を用いた鉛直免震システムの加振実験
山田 学佐藤 栄児福井 弘久富澤 徹弥矢部 隆太郎原 碧波田川 泰敬
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2025 年 25 巻 2 号 p. 2_194-2_207

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抄録

近年日本では強い揺れを伴う地震が頻発し,南海トラフ地震や直下型地震の発生が予測されている.従来の免震装置は建物の被害軽減に絶大な効果を示すが,震度6強以上の強い揺れを伴う地震において,上部構造の応答加速度を震度換算した場合,震度4以下にすることは困難である.これは殆どの免震装置が水平方向の揺れの低減を目的に作られているのに対して,震度が鉛直方向を含めた3次元の加速度で評価されることにも起因する.一方,都市ガスやエレベータなどのインフラが,緊急停止や地震後点検が必要となる条件の閾値は,震度5弱以上とされているケースが多い.そこで強い揺れを伴う地震について,免震装置上の上部構造の応答加速度を震度換算し,これを震度4以下にできる3次元免震装置の開発を目標とした.免震装置の構想は,流体浮揚式水平免震とパラレルリンク式鉛直免震を組み合わせたもので,パッシブ式での実現を目指す.本報告では,パラレルリンク式鉛直免震の小型モックアップを製作し,その特性の把握と,鉛直方向加速度を1/3以下にすることを目標に,ランダム波と地震波による加振実験を行った.この結果,鉛直免震は摩擦型の挙動を示し,共振は発生せず,加速度を1/4以下にできることを確認した.今後,流体浮揚式水平免震装置と組み合わせることで,強い揺れを伴う地震を震度4以下に低減できる見通しを得た.

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