2025 年 25 巻 4 号 p. 4_142-4_154
地震時の安全確保や事業継続のための構造ヘルスモニタリングの検討が進んでいるが,中高層建物で複数のセンサを用いるものが多い.本論では低層建物を対象に,簡易な計測により被災情報を得ることを目的として,上層階1点の加速度記録からマルチ・フィルターの原理を強震記録解析に応用した非定常振幅スペクトルを用いて地震時卓越振動数とその経時変化の抽出を試みた.1994年三陸はるか沖地震で被災したRC造3階建物の多点観測記録を用い,地盤・建物系の応答特性を検討したうえで,屋上1点による提案手法と,1階も含む2点からARXモデルで求めた卓越振動数の経時変化の比較を行った結果,1点の簡易な計測でも低層建物の被災判定につながる変化を捉えうることを確認した.また,比較のため東北地方太平洋沖地震で被災した中層SRC造建物の分析を行い,本手法の特性を検討した.