日本地震工学会論文集
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論文
非線形地震応答解析による地震被害推定を目的とした平均的な木造建物群モデルの構築
境 有紀飯塚 裕暁
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2009 年 9 巻 1 号 p. 1_32-1_45

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抄録
非線形地震応答解析による地震被害推定を目的とした日本の中で平均的な耐震性能をもつ木造建物群モデルの構築を行った。具体的には、建物の耐震性能の中で地震応答に大きな影響を与える建物の周期と耐力について、建物群の周期分布を実在建物の微動計測結果と建築年を基に作成し、周期と耐力の関係式から耐力分布を求めて建物群を構築した。この方法を用いれば、微動計測結果から建物耐力を推定することができ、数多くの建物耐力データを得ることができる。構築した建物群の妥当性を検証するために、建物群中の個々の建物を一自由度系にモデル化し、建物群モデルに既往の強震記録を入力して非線形地震応答解析を行って、地震応答解析で得られた被害率と、強震記録が得られた観測点周辺の実際の被害率を比較した。その結果、提案した木造建物群モデルは、被害率の誤差が平均2 ~3%程度という精度で実際の全壊率を推定できることを確認した。提案した木造建物群モデルは、大地震が発生して強震記録が得られたとき、あるいは、強震動シミュレーションにより予測波形が得られたとき、非線形地震応答解析を行うことにより、その波形が日本の中で平均的な耐震性能をもつ木造建物群にどの程度の被害を及ぼすものであるかを定量的に全壊率という形で推定することができる有効なツールとなる。
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© 2009 一般社団法人 日本地震工学会
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