抄録
一般的に伝統木造建築物の水平構面は剛床仮定が成り立ちにくいとされている。しかし、懸造形式を有する寺社において、舞台床の水平剛性の考慮の有無は、建物全体の耐震性能評価に与える影響は少なくないことが予想される。
本論文は、床などの水平構面が、懸造形式を有する伝統木造建築物の耐震性能評価に与える影響を時刻歴地震応答解析によって検討したものである。研究対象は、京都市にある国宝清水寺本堂とした。
舞台床や小屋組などの水平構面の剛性、耐力を無視した解析結果では、舞台部分の局所的な応答を過大評価する結果となった。しかし、本堂部分を主とする建物全体の地震時挙動に屋根による水平構面が与える影響は小さいことがわかった。
懸造形式の伝統木造建築物の耐震性能評価においては、小屋組や天井の水平構面の評価よりも、舞台床による水平構面の適切な剛性評価が重要になる。