経済地理学年報
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中国東北経済区の外向型経済化
駒井 正一
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1993 年 39 巻 1 号 p. 18-33

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抄録

第7次5ヵ年計画以後, 中国は経済区分に3大地帯を採用した. 東北経済区は遼寧省が東部, 他は中部に区画され, 二重構造をなしている. 前者はインフラと技術の優位性をもち, 「辺境」をかかえる後者とは, 発展上の雨離状態がめだつ. 区の経済中心も遼寧に重心をもった吟大線などの結節点に集中し, 独特の大都市群を形成してきた. 比較優位の原則が貫かれ, 東北経済区は全国的な貢献が要請されたため, 高エネルギー消費の旧式企業が更改されずに稼働せざるをえなかった. 改革・開放体制の下では, 外資とリンクした設備更新や"両頭在外"などの新しい外向型経済の構造を備えてきている. "横の経済連合"も強調されたため, 各経済単位を重視した各種の協作区が結成されてきた. なかでも, 大連は"準直轄市"ともいうべき計画単列都市に指定され, 省級の権限が与えられている. 東北経済区全体の対外貿易開港地としての地位を占めるだけでなく, 隣接する河北や山東などとネットワークを組んだ環潮海経済区の中心の一つとして, 重層性を高めている. 一方, 吉林や黒龍江では, 人口は長春やハルビンの都市群に集中する. 国境地帯では城鎮体系は"多核稀疏"にならざるをえず, 農業や林業だけに頼らない開放型の貿工農一体化システムの形成が求められる. そのため, 黒河などに国境経済開発区を設け, 対峙するロシアや朝鮮民主主義人民共和国の小都市と協同の契約や貿易協作を行ってきた. その過程では, 小額貿易だけでなく"南聯北開"を必要とするものや"三来一補"の形式が増えるため, 企業の活動環境の整備が急がれる. また, 三江平原や図側江河口開発は, 今後の東北経済区発展のカギを握ると思われ, 完成された計画と共通認識の上にたった協力が要請されている.

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© 1993 経済地理学会
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