経済地理学年報
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政治・経済再編下におけるロシア極東経済の地域変動
小俣 利男
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1993 年 39 巻 1 号 p. 34-49

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抄録

旧ソ連およびロシア連邦の極東地域は, ペレストロイカにともなう対外経済関係の再評価によって内外から注目され始めた. 一方, ソ連解体後, 独立国家共同体の将来は不透明であり, 極東地域を含むロシア連邦も政治・経済の再編過程にある. わが国では「環日本海経済圏」などの構想やその一部であるロシア極東の対外経済関係が活発に議論されてきた. 本稿では, そうした対外経済関係をロシア極東側に視点を置いてとらえるため, 極東経済について旧ソ連の経済発展政策の中での位置づけや1980年代後半以降の政治・経済再編下での変化をその地域的側面を中心に検討し, 「環日本海経済圏」構想についても若干論じた. 旧ソ連極東は中央集権的指令制経済と限られた対外関係により, 旧連邦内の「周辺」として若干の工業をもつ資源産地とされ, 同時に, 域内も社会経済的側面において南北間を基本にした地域分化が著しい. 1980年代後半以降, 旧ソ連やロシア連邦は対外経済関係の積極化のために極東地域を重視した各種施策を推進し, 合弁企業の立地などの動きも出てきた. 一方, 連邦中央・地方関係は十分に確定しておらず, 地域内の行政体間で連携と個別化の動きもあるが, 地方分権化は必ずしも順調に進んではいない. 極東地域としては市場経済への移行と対外経済関係への参入が並行しているが, 旧体制下で形成された経済とその地域的展開や合弁企業の立地動向から, 極東経済は南北間や行政地域間で格差をともなって変動するものと予測される. 国際分業上の位置など地域経済の再編における連邦・地方両政府の関与の方式・可能性が重要になり, 予定中の国家的地域計画の動向が極東経済の地域変動にとって注目される. その際, ロシア極東の対外経済関係地域としては, 「環日本海経済圏」をその一部分としつつも, アジア太平洋地域が考えられている.

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© 1993 経済地理学会
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