経済地理学年報
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ロシアとロシア極東地域における新しい商業構造発展の課題と展望(英文)
ザンブルネン クレイグ
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1993 年 39 巻 1 号 p. 50-67

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抄録

本稿の目的は, ロシアとロシア極東地域における新しい組織形態と制度の発展に伴う諸問題を明らかにし, 今後の展望を行うことである。まず, ゴルバチョフの改革開始以前における, ソ連の経済システムの法的制度的背景を簡潔に論ずる. ついで, 改革と関連する主要な財産権問題が提示される. そのうえで, 1988年以降, ソ連とロシア連邦で制定された, 財産と組織の新しい形態に関する重要な法的改革のいくつかをとりあげて評価する. 具体的には, 合弁事業, 外国からの直接投資, 自由経済地区, 国営企業の再編, さまざまなタイプの協同組合, 中小企業, 株式会社, 証券取引, 商品取引などについて, それらの特質と実際の働きを明らかにする. 千島列島南部に関する長年の, そして最近さらに激しくなりつつある領土紛争は, ロシア国内であれくるっている経済闘争と政治闘争の文脈の中に位置付けてみた. 非国有化と民営化の過程に関する改革立法についても取り上げる. その際, 現在進行中のバウチャー計画に対する, 初期の悲観的な評価についても論ずる. ロシアの経済市場改革の過程がいずれまもなく成功するであろうと楽観視できるわけではないし, 古いシステムの解体が完全なものからほど遠く, 社会的インフラストラクチャーの崩壊, 蔓延する貧困, 富の急速な集中, 地域間・民族間の武力紛争, 苦悩と絶望の蔓延といった最悪の事態が発生しかねないという恐れがある. (和文要旨は英文要旨から山本健兄が翻訳した)

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© 1993 経済地理学会
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