経済地理学年報
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「社会・空間」視点にもとづく地域認識の可能性 : 都市・農村論の再考を通じて
中西 典子
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1994 年 40 巻 3 号 p. 183-201

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抄録
現代における運輸・交通の発達や情報化の進展は, 中枢管理機能としての東京一極集中と, それにもとづく産業部門の再配置および人口の移動をたえず促している. この過程で導かれる地域社会の再編成は, かつての都市・農村という空間的枠組み自体を暖昧なものにするとともに, 様々な形での地域格差を新たに生み出してきている. ところで, 従来の地域論においては, 多くの場合, あらかじめ社会的まとまりをもった空間的枠組みとして「地域」が設定されていた. しかし, 筆者は, このような「地域」概念では現代的地域格差の実相を論理的に解明することが困難である, と考える. こうした考えから本稿では, まず, 地域格差論の基底にある従来の都市・農村論をいま一度批判的に検討するなかで, 現代に通じる射程を見出すという作業を行った. そこから得られたものは, 都市・農村論が, 単なる空間類型論ではなく, 原理的には, 生産力の発展に伴う社会的分業と私的所有を基軸とした, 地域格差創出過程の問題に言及するものであったという点である. かかる点を摂取した上でさらに, 空間を, 地域現象を分析する際の外在的な枠組みとしてではなく, それ自体, 社会関係に内在化されたものとして把握することを試みた. そのためには, 「空間」というものを物理的イメージで捉えるよりもむしろ, 関係概念として捉える必要がある. よって, 社会の「空間的属性」という視角から, その指標, すなわち「場所性」, 「領域性」, 「境界性」を導入することによって, 社会的諸活動におけるそれら相互の連関から, 「問題の地域性」をあぶりだしていくという方法を提起した. 以上の方法からすると, 現代的地域格差が生み出される過程は, 次のように言うことができる. すなわち, より高度な資本蓄積の段階において, 民間資本の活動「領域」が, 私的所有にもとづき, 自然的・人的・物的資源を最大限に活用する戦略として, 時間距離を短縮しつつ各「揚所」を機能に応じて利用すること. それは必然的に, 行政区域の「境界」を媒介することによって, 住民の生活「領域」をも様々な形で「境界」づけ, 結局, 「場所」的な格差構造を表出させていくことになるという点である.
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© 1994 経済地理学会
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