経済地理学年報
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現代資本主義における空間集積に関する一考察
藤川 昇悟
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1999 年 45 巻 1 号 p. 21-39

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抄録

近年, 欧米の経済地理学では, スコットの『新産業空間』を契機として, 再び空間集積が脚光を集めている. しかしながら, そこでは, 空間集積に関する諸概念が厳密に規定されぬままとなっている. そこで本稿では, 空間集積に関する諸概念-集積形態と集積利益-の再整理を通して, 新産業空間論およびウエーバーに代表される古典的集積論が有する問題点の克服を試みた. その結果, つぎの成果が得られた, まず第一に,「接触の利益」を「調整の利益」と読み換えることで, 集積利益の再分類を行った. こうすることで, わが国の集積論で実証的には認識されていたものの, 理論的には位置づけられていなかった集積利益, すなわち「リンケージの転換による調整の利益」が存在することを指摘し, さらに, この利益を認識することで集積形態-高次と低次-の区別を明確なものとした. 第二に, 再分類された集積利益と集積形態との対応関係を整理することで, 実際の集積地を分析する枠組みを構築した. そして最後に, 簡単にではあるが, 空間集積とイノヴェーションの関係を論じ, 「リンケージの転換による集積利益」こそが, 現在, 地域の成長にとって重要な集積利益ではないかと提起した.

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© 1999 経済地理学会
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