経済地理学年報
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交通・通信の整備・普及と都市・都市システム(<特集> 日本経済の再生と地域経済構造)
須田 昌弥
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1999 年 45 巻 4 号 p. 307-316

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抄録

本稿では, 交通・通信が都市にどのような影響を与えるかを考察・展望する.まず都市圏内の場合, 交通対通信の代替関係より, 企業への労働者の「通勤」対企業間の「情報交換」のトレードオフが問題になる.それをモデル化したFujita and Ogawa(1982)によると, 前近代の都市では通勤コストは極めて高く, 人々は職住一致の生活を営んでた.しかし今日では交通機関が発達し, 加えて企業間取引の重要性が高まったため, 職住分離が進み, CBDが1ヶ所に集中するに到った.逆に通勤コストが取引コストに比べて大きくなるならば, CBDは郊外に分散し, エッジシティを形成する.次に都市システム全体の場合, 通信と交通の代替関係が大きな意味を持つ.通信コストの低下によって, 大都市とその外の地域の間での役割分担がより明確になり, オフィスは大都市に集中する.そしてその規模を維持させるだけの十分な集積の利益=都市化の経済が存在する大都市への, 「一極集中」の蛍光はより強まるであろう.ところで, 「都市圏」と「都市システム」には, 現在ではそれほど絶対的な規模の差はない.そして, 情報の輸送がより一層通信によって行われるようになる時, 両者の差はさらに意味を失うであろう.このことは全国が1つの都市になることにつながる.それによって社会・文化における「地方の個性」が喪失する危惧もあるが, 都市圏の多極化を通じて, 地方の個性を「都市圏内の」地域の個性として維持していくことも可能ではなかろうか.

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© 1999 経済地理学会
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