2017 年 63 巻 2 号 p. 115-135
本研究は,ショートフードサプライチェーン(SFSC) の生成を知識・技術構築の舞台である人間-非人間間のネットワークに着目しながら明らかにした.その際,SFSCの具体的な事例として,能登地域におけるワイン専用種ブドウ(原料ブドウ)の供給体系を取り上げた.能登地域における原料ブドウの生産事業では,ネットワークが空間的に伸長ないし収縮する中で,ブドウ栽培をめぐる知識・技術の構築プロセスが循環的に進行していった.とりわけ,新たな知識・技術の獲得の際に距離を隔てたアクターとの関係が取り結ばれる一方,知識・技術の調整,共有,改変の場面でローカルレベルでのアクター間の密な関係が形成されていった.上のプロセスの各局面においては,地域内外の様々な非人間が動員されるとともに,それらとの関係の中で人間アクターの知識・技術の獲得,調整,共有,改変をめぐる行為主体性と具体的な実践が方向づけられていった.知識・技術構築に関わる人間アクターの諸実践は,再帰的に累積することで原料ブドウ供給体系の生成ないし再生産へと帰結する.事例でみられた知識・技術構築のプロセスは,一般的な食料供給体系の生成においてもある程度共通してみられることが予想されるが,とりわけ「獲得」と「調整」がSFSCに固有の重要な局面として捉えることができる.