経済地理学年報
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大会報告論文
人口流動と開発動向からみた広域中心都市・広島の変容
川瀬 正樹
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2018 年 64 巻 4 号 p. 291-302

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抄録

    本報告では,1985年以降の広島,特に近年の広島の動向について,人口移動,通勤・通学,商圏調査等の人口流動データの分析に加え,交通網の整備,近年の各施設の開発状況について報告し,広域中心都市・広島の変容について考察した.
    1985年以降,広島市の人口は,特に丘陵地を切り崩して住宅開発が行われてきた郊外の区で増加し,周辺県からの転入と大都市圏への転出が大幅に減少した.また,商業面では中心市街地の中心性が2004年以降著しく低下した.代わって郊外のショッピングセンターに客足を奪われ,もはや中心-郊外の対立から郊外同士の競合に変化してきている.広島駅前の再開発エリアでも,オフィスビルではなくタワーマンションが増えており,現段階で業務機能が集積したと言えない.
    あらゆる観点からみて郊外化が進んできた一方で,広域中心都市としての広島の地位は低下しつつある.支店の統廃合が進んだことなどにより東京一極集中が進む一方で,近年発展を遂げる福岡よりも東京・大阪寄りに位置する広島の「支店経済都市」としての性格は弱まっていると言わざるを得ない.一方で,広島では最近,ホテル建設が増えており,広島の都市としての性格が変容しつつある.今後,広島が広域中心都市としての地位を維持し続けられるかどうかの岐路に立たされていると言える.

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© 2018 経済地理学会
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