本稿は,人口問題と地域政策,まちづくりという3つの観点から,10年間に及ぶ地方創生をめぐる地理学における議論の論点を整理し,その見取り図を提案するものである.人口問題の観点からは,出生率低下と東京一極集中の実態把握と要因分析をもとに,少子化対策と人口分散策の内容と成果が検討された.しかし実際には自治体間の人口獲得競争に陥っており,人口減少を前提とした社会構想の必要性も提起された.地域政策の観点からは,選択と集中を強調する地方創生政策が政策対象として選択される地方都市と切り捨てが懸念される条件不利地域に及ぼす影響,それらを踏まえた目指すべき国土・地域構造が議論された.また,成長・成果重視や選択と集中といった政策手法がもたらす国への再集権化,自治体や住民の自立阻害といった副作用が報告され,地方分権と住民参加の促進が求められた.まちづくりの観点からは,地方創生政策がまちづくりへの注目とシンクロを進める中で,地方創生がまちづくりの代名詞として定着しつつある状況が報告された.その上で,まちづくりの持続的展開に向けて,地域資源の活用と地域の価値づけ,担い手の確保・育成などの課題にいかに対応すべきかが議論された.これらを踏まえ,地理学は従来からの地域政策の分析・提言に加えて,「ポスト地方創生」に向けたより実践的な調査研究や伴走支援を行う必要性が提起されている.