2026 年 29 巻 4 号 p. 686-697
目的:本研究は,救急現場における従来法(徒手・ターポリン担架)とNo Lift資器材(移乗ベルト,スライドシート・ボード,エアストレッチャー)を用いた移乗・搬送方法の違いを,傷病者および救急隊員の身体的負担の観点から比較検討することを目的とした。対象と方法:救急救命士養成課程の学生21名を対象に,坐位・仰臥位からのエアストレッチャーへの移乗,および廊下・階段搬送を実施し,苦痛度,主観的疲労度,主観的運動強度,移乗・搬送時間等を評価した。結果:No Lift法は従来法に比べ移乗・搬送時間が延長するものの,坐位・仰臥位移乗および階段搬送において傷病者の苦痛を軽減し,さらに多くの場面で救急隊員の主観的疲労度と運動強度を低減した。一方,腰部負担に関して有意差はみられなかった。結論:No Lift法は救急活動において身体的負担軽減に寄与する可能性が示唆され,傷病者の緊急度や状況に応じた適切な選択が必要である。