抄録
本研究では、4名の国語科教師たちの教科内容観が授業実践されるプロセスについて、教師間での共通性と教師ごとの固有性とを解明した。その特色は、離島および山間部高校における、学習者の抱える課題解消を見通した実践事例を取り上げた点にある。ナラティヴ・アプローチを研究方法とし、教師たちの語りを分析した。その結果、国語科教材文のことばを尊重した読みを通して、学習者の世界観の偏狭性を解消しようと志す点に教師間の共通性が見出された。他方で、学習者が抱える課題のうち、どの側面を重視するかによって、認識内容を重視する教師、あるいは、思考様式を重視する教師というように、各教師らしさの象徴としての教科内容観に差異が生じていた。本研究は、学習者が抱える課題を起点とした授業づくりに励む教師たちの、実践的思考の軌跡を描いた点に特徴がある。