本研究の目的は,インフォーマルな授業研究コミュニティの動態をそこに関与していた教師の経験から描き,学校改革研究への示唆を得ることである。ある小学校の学校改革における授業研究を行うインフォーマルな教師コミュニティを事例に, ウェンガーの提唱する実践コミュニティに関する議論を枠組みとして検討した。コミュニティ育成のための原則を視点としてインタビューで得られた教師の語りを分析した。その結果,第に従来の学校改革のアプローチと異なり,既にある教師のつながりを活性化させて組織全体へ向かうアプローチの様相を描けた。このアプローチにおいて教師たちは安心感を基盤に方向性を模索し,その議論過程で個々の学習が実現されていたと考えられる。第に,このような教師の情動的な側面が基盤となり認知的な側面での学習が実現される背景には,コーディネーターによる多様な参加レベルに関するマネジメントの存在が明らかになった。