2023 年 26 巻 1 号 p. 1-10
本稿の目的は,ニューカマー生徒支援を組織的に行う上で課題となる要因を明らかにすることである。特定のニューカマー生徒に付与される表象の様式が教師間で異なることに着目し,支援に関わる知識の共有が困難となる契機を見出した。その上でニューカマー生徒支援を組織的に行う課題の要因を明らかにした。分析の結果,生徒を捉える視点が教師間で異なり,同一のニューカマー生徒であっても付与される表象の様式に教師間で違いがみられた。表象の様式を付与する教師の視点は,組織内で担う役割や所属する校務分掌といった組織的要因によって状況依存的に獲得されていた。特に社会的差異への配慮は,教師集団全体で対処すべき課題となりづらく,社会的差異に配慮したニューカマー生徒支援の組織的な支援が困難になると推察された。支援を担う教師をフォローする分掌体制の構築が社会的差異に配慮した効果的なニューカマー生徒支援で重要となることを指摘した。