抄録
本研究の目的は,児童の特性に合わせた授業像への転換と児童の特性に合わせた授業への熟達化のプロセスの検討である。子ども理解研究と反省的実践家としての教師研究の先行研究の知見を統合し,熟達化のプロセスを仮定した。小学校教師の経験を持つ大学教員3名に行ったインタビューの結果を複線径路・等至性モデル(TEM)を用いて分析を行い,以下2点が明らかとなった。第1に,従前の教師の指導観や教師像に基づく指導や関係構築が特に困難な児童の担任を務めることが授業像の転換の端緒となる。第2に,教師はその児童の生活背景も含めた子ども理解を行い,その児童に適した指導法を模索する。同時に,自身の子ども理解の不十分さを発見し,困難の原因を教師自身の側から探索する。本研究の成果として,関係構築が困難な児童との関係構築を積極的に志向する教師の態度がこれらの条件となる,また,教師の私的経験が共感的な子ども理解を促進する示唆を得た。