抄録
着任直後から多様な業務に直面する初任の学校教員は、そもそも「何が分からないか分からない」状態に置かれやすい。本稿は、小学校初任教員6名への継続的インタビューの語りを分析し、この「分からなさ」をめぐる経験と、その特定・対処を通じて教師集団へと参与していく構造を明らかにした。分析の結果、初任教員は教師集団における文化の型が可視的であるとは限らないために、職務に関わって知らなければならない事柄の同定を、着任前後から独力で進めざるを得ず、また同僚からの助言は必ずしも自身の関心と一致しないことから、「分からなさ」を抱え込みやすいことを示した。他方、1 年間の実践を通じて類型的な処理法の獲得が進むと、「分からなさ」は対処可能な対象へと変容し、教師集団における周辺的な位置を脱していく。以上より、初任期の困難の一端は、文化の型の不可視性に起因する構造的特徴として捉えられることを示した。