日本腹部救急医学会雑誌
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特集 : 「急性膵炎の診療ガイドライン」によって診療行為がどう変わったか?
急性膵炎診療の実態
―厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の全国調査からの解析―
木原 康之大槻 眞
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2007 年 27 巻 3 号 p. 459-462

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抄録

わが国の急性膵炎の1年間の推計受療患者数は, 1982~1986年の14,500人から2003年には35,300人までは増加し, なかでも重症急性膵炎患者が増加する傾向にある。急性膵炎の致命率は1998年の7.3%から2003年には2.9%まで改善した。特に重症急性膵炎の致命率は1982~1986年の30%から2003年には8.9%まで低下し, 著明な改善がみられた。重症急性膵炎死亡例の第1病日の輸液量は1995~1998年, 2003年いずれも急性膵炎における初期診療のコンセンサスの指針で示されている輸液量より少なかった。重症IIおよび最重症例, 第1病日に3~5L輸液した群の致命率はほかの輸液量より低かった。2003年の蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法の治療件数, および治療頻度は1995~1998年に比し, いずれも増加した。膵炎発症から48時間以内に蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法を開始した群の致命率は48時間以降に開始した群より低い傾向にあったし, 蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬持続動注療法を行った場合の感染性膵壊死の合併は非施行群に比し低い傾向にあった。重症II以上の重症急性膵炎患者に持続的血液濾過透析を施行すると, 呼吸不全による死亡の割合が低下した。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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