日本腹部救急医学会雑誌
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特集 : 「急性膵炎の診療ガイドライン」によって診療行為がどう変わったか?
急性膵炎の診療ガイドラインによって何が変わったか
―発行前後での治療成績の比較検討―
古屋 智規高橋 賢一橋爪 隆弘和嶋 直紀加藤 雅志
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2007 年 27 巻 3 号 p. 469-472

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抄録

急性膵炎の診療ガイドラインで診療内容がどのように変わったかを明らかにするため, 重症例82例で, ガイドライン発行 (2003年7月) 前後の重症度, 膵炎発症および重症判定から搬送までの日数, 特殊治療施行率, 致死率を比較した。重症度は厚労省重症度スコア (S), APACHE-IIスコア (A) を使用した。特殊治療は動注療法, 選択的腸管内除菌, 早期経腸栄養, 持続的血液濾過透析, エンドトキシン吸着療法などの血液浄化療法とした。発行前の54例 (S=10点, A=13点 : 中央値) の発症から搬送までの日数は平均17.4日, 重症判定から12.0日で, 特殊治療施行率は75.9%, 致死率は18.5%だった。一方, 発行後の28例は発症から搬送まで6.9日 (重症判定から5.7日) と早く, 特殊治療施行率100%で, 重症度はS=13点, A=19点と高かったが, 致死率は10.7%と低かった。ガイドライン発刊により, 搬送までの日数が短縮し, 早期に適切な初期治療が開始され, 特殊治療の位置づけが明確化して施行率が上昇し, 治療成績が向上したと考えられた。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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