日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
特集 : 「急性膵炎の診療ガイドライン」によって診療行為がどう変わったか?
救急・集中治療の臨床現場からの報告
―ガイドライン公表前後でのICUにおける重症急性膵炎の診療の変化―
北村 伸哉渡邉 栄三雨宮 志芳中西 加寿也平山 陽大島 拓平澤 博之
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2007 年 27 巻 3 号 p. 473-479

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抄録

急性膵炎の診療ガイドラインの導入効果を検証するために, ICUにおける本ガイドライン公表前後の診療の変化を検討した。結果, 公表前 (n=36) の前医における厚労省重症度判定率は6.5%, 重症化からICU入室までの日数は2.4±5.2日であり, 入室時厚労省重症度スコアは8.9±2.9であった。一方, 公表後 (n=30) の重症度判定率は37.8%と上昇 (P<0.01), ICU入室までの日数も0.6±1.4日と短縮 (P<0.03), 重症度スコアは6.4±3.5と低くなった (P<0.03)。しかし, 前医におけるガイドラインの活用率は50%に過ぎなかった。ICUにおける治療法は公表前後で差異はなく, 救命率にも有意差は認められなかった。考察, 本ガイドライン公表後は重症急性膵炎が致死率の高い病態であるとの認識が一般臨床医にも広まり, 重症化からICU入室までの日数も短縮された。しかし, 予後判定が煩雑で, 本ガイドラインの搬送基準が十分に活用されているとは言えなかった。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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