2007 年 27 巻 3 号 p. 481-485
(1) 目的・方法, 当科では1990年以降, 重症急性膵炎を139例経験している。治療方針として, 1995年より動注療法, ロングチューブからの経腸栄養を導入し, 1999年以降は現在の「急性膵炎の診療ガイドライン」に一致した形となっている。今回治療方針の変遷により, 前期 (1990~1995年) 52例, 中期 (1995~1999年) 27例, 後期 (1999年以降) 60例の三群に分け, 治療成績を解析した。(2) 結果, 三群間で年齢, 性別, 成因, 重症度に差はなかった。動注療法と経腸栄養の施行率は, 前期から後期にかけ, 著明に増加していた。経過中の臓器障害併発率や感染併発率に差はなかった。しかし, 膵に対する手術施行率は, 前期40%, 中期22%, 後期17%と有意に減少し, 死亡率も, 前期37%, 中期30%, 後期22%と改善していた。(3) 結語, 重症急性膵炎において「急性膵炎の診療ガイドライン」に即した治療は手術を回避し, 死亡率を改善していた。その理由として動注療法と経腸栄養の有用性が示唆された。