日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
長期経過観察中に癌化を伴い十二指腸脱出をきたした胃腺腫の1例
和久 利彦
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2007 年 27 巻 3 号 p. 491-494

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抄録

症例は82歳, 男性。8年6ヵ月前に胃検診目的にて当院受診。胃内視鏡検査で前庭部大彎に隆起性病変を認め, 生検した結果はGroup III, 中等度異型の管状腺腫であった。内視鏡的切除を勧めたが拒否したため, 定期的に胃内視鏡検査を続けた。次第に胃腺腫の増大を認めるも, 生検結果はGroup IIIで中等度~高度異型の管状腺腫であった。繰り返す嘔吐, 心窩部痛, 腹部膨満感を主訴に当院受診。胃内視鏡検査・胃X-P検査・腹部CT検査で, さらに増大した胃腺腫が十二指腸球部へ脱出し, 嵌頓した状態であった。胃腺腫の癌化の可能性を考慮し, 幽門側胃切除術+D1郭清を施行した。腫瘤の大きさは8×7cmであった。病理組織結果は病変の大部分は管状腺腫, 境界悪性病変であるが, 一部に高分化型管状腺癌を認めた。胃腺腫を無治療で長期経過観察した場合, 増大・癌化し十二指腸脱出をきたすことがあるので, 粘膜切除可能な小さな腺腫時に内視鏡的切除を行うべきである。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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