2007 年 27 巻 3 号 p. 515-518
症例は58歳, 男性。既往歴に糖尿病と心筋梗塞があり, 3ヵ所に冠動脈ステント留置術を受け, 突発性心房細動の併発に対し抗凝固薬を投与されていた。右外鼠径ヘルニア術後24年目に再発し, 2年後に嵌頓にて受診した。腹部CTにて腸管の嵌頓が認められた。嵌頓後10時間が経過していたため, 緊急手術を施行した。ヘルニア嚢内に二つ隆起があり, 内外ヘルニアの合併であった。外ヘルニアは腸管の嵌頓で, 内ヘルニアは腹膜外型膀胱ヘルニアであった。嵌頓腸管は壊死に陥っており鼠径操作で切除吻合できず, 下腹部正中切開を追加し, 腹腔内操作にて壊死腸管を切除した。術中膀胱壁をヘルニア嚢と誤認して切開するも2層に縫合し, 修復した。CTをretro-spectiveに検討してみると, 鼠径ヘルニア嵌頓だけではなく膀胱ヘルニアの合併も読影可能と判断された。鼠径ヘルニア嵌頓に本邦ではまれとされる膀胱ヘルニアを併発した症例を報告した。