2007 年 27 巻 3 号 p. 519-523
症例は81歳, 男性。義歯を誤飲したため近医を受診。同院にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ, 胸部食道に有鈎義歯を認めたため摘出を試みたが困難であったため当院紹介。当院でも内視鏡下での摘出を試みたが, 頸部食道まで引き上げたところで強い抵抗を認め, さらに皮下縦隔気腫も認めたため, 食道穿孔と診断し緊急手術を行った。頸部操作にて食道を露出, 食道を縦切開し有鈎義歯を摘出した。しかし皮下縦隔気腫の原因となった穿孔部を術中に確認できず, また患者が高齢であることも考慮し, 縦隔炎予防を目的として, T-tubeを食道切開部より食道内に留置した。術後は順調に経過し, 術後21日日より経口を開始, 術後28日目にT-tubeを抜去し, 術後41日目に退院となった。有鈎義歯の誤飲と内視鏡処置による食道穿孔に対して, 外科的切開術で摘出した1例を経験したので文献的考察を加え報告した。