抄録
腹腔鏡下イレウス手術は,術前診断,手術手技,手術終了時の確認操作,開腹移行に関連して多くの問題をかかえており,その手術適応を拡大するのは困難な状況におかれている。本論文では,まず,これらの問題点を整理して適応の限界をよく認識できるようにする。次に,適応を拡大するための1つの方策として,当科で行っている「開腹術を前提とした腹腔鏡補助下手術」を提示し,その有用性について検討する。従来の小開腹併用手術と違い,「必ず小開腹を行う」ことを前提として腹腔鏡操作を行うのであるが,適応をできるだけ限定せず,21例にこのコンセプトに基づく手術を施行した。大開腹への移行症例はなく,短期的には再手術を要する合併症やイレウスの再発を認めなかった。結果的に腹腔鏡操作単独で手術が可能と思われた症例は5例(24%)のみであった。