抄録
症例は71歳,女性。下血・腹痛を主訴に入院した。注腸造影で左結腸曲に蟹爪状所見,CTで同部に4cm大の脂肪と同密度の腫瘍を認めた。大腸内視鏡で腫瘍表面はびらんと潰瘍を呈し,pillow signとcushion signは陰性であった。脂肪腫による腸重積症が疑われたが,腹部所見は軽微で腹膜刺激症状を認めないため待機手術とし,後日,結腸部分切除を行った。左結腸曲で横行結腸が下行結腸に軽度嵌入していた。腫瘍は4cm大で粘膜下層に局在し,病理学的に脂肪腫と診断された。大腸脂肪腫は慢性的機械刺激によりその表面に炎症性変化が起きると,典型的所見を示さない場合があり,CTをはじめ各種検査の総合的判断が重要である。一方で脂肪腫は本来弾性に富む腫瘍であるため,術前重積解除例や重積が継続した状態にあっても症状軽微な症例があり,腹部所見を観察しつつ症例に応じて待機手術の選択を考慮すべきと考えられた。