2008 年 28 巻 5 号 p. 731-734
症例は34歳,妊娠28週の経産婦。右下腹部痛を訴え当院産婦人科を救急受診したが,理学および検査所見上,婦人科疾患は否定的であり,急性虫垂炎の疑いで同日当科紹介となった。腹部超音波検査上,腫大した虫垂は描出されず,造影剤の使用を避け,単純CT検査を施行したが虫垂炎の確定診断は困難であった。そのため腹部骨盤部MRIを施行したところ,虫垂の腫大およびT2強調脂肪抑制像で周囲の高信号域を認め,急性虫垂炎と診断し,同日虫垂切除術を施行した。術後の経過は良好で早産することもなく術後13日目に軽快退院となった。MRIの虫垂描出能は高く,また放射線被爆もないことから,超音波検査での虫垂描出が難しく造影CT検査の施行が困難な妊娠中の急性虫垂炎症例には,診断および手術適応の決定に有用であると考えられた。