抄録
症例は,70歳の男性。突然の上腹部痛および嘔吐が出現し,次第に増強するため当院を受診した。来院時,上腹部に自発痛と圧痛を認めた。腹部CT検査では肝周囲に血性腹水を認め,膵頭部と十二指腸下行脚背側に接して血腫,および造影剤の血管外漏出を認めた。緊急血管撮影検査を施行し,後上膵十二指腸動脈に動脈瘤を2ヵ所認め,同部位を出血源と診断し,経カテーテル的コイル塞栓術(TAE)を施行した。TAE後の血管撮影検査で,動脈瘤の描出はなくなった。術後,再出血を認めず,第13病日に退院した。腹部内臓動脈瘤破裂はまれな疾患で,中でも膵十二指腸動脈瘤は少ない。膵十二指腸動脈瘤に対する治療は,現在ではTAEが第1選択である。今回,われわれは後上膵十二指腸動脈瘤破裂に対し,TAEにより治療した1例を経験したので,自験例を含めた膵十二指腸動脈瘤本邦報告98例を検討した。