抄録
74歳,男性。主訴は嚥下困難。既往歴は食道胃接合部癌にて左開胸開腹胃全摘,下部食道切除術,胸腔内食道空腸吻合,Roux-en-Y再建術を施行している。術後6ヵ月後に主訴が出現したため,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,食道空腸吻合部狭窄を認めた。内視鏡的バルーン拡張術を施行したところ,拡張中に急な胸痛,呼吸困難を訴えた。吻合部粘膜に裂傷を認め,食道破裂を疑った。聴診では左呼吸音が消失し,胸部CT検査にて緊張性気胸と両側胸水を認めたため,左前胸部,前腋窩線第4肋間から胸腔ドレナージを施行し症状は軽減した。胸腔ドレナージを3週間行い気胸は改善したため,胸腔ドレナージチューブを抜去した。上部消化管内視鏡検査では,損傷した粘膜は修復し経口摂取可能となった。吻合部狭窄に対する内視鏡的拡張術後に医原性食道破裂から緊張性気胸を起こしたと考えられた症例を経験した。