日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
抗血小板薬による消化管出血を契機として発症した虚血性心疾患の2例
目﨑 直実三浦 智史木村 成宏中村 潤一郎山田 聡志三浦 努柳 雅彦高橋 達
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2012 年 32 巻 3 号 p. 657-661

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抄録
抗血小板薬内服中の消化管出血が虚血性心疾患を顕在化させた2例を経験した。症例1は64歳男性。クロピドグレル内服中に吐下血をきたした。出血性胃潰瘍に対し内視鏡的止血術施行後も心窩部不快感が持続し諸検査で急性心筋梗塞と診断した。心臓CTや冠動脈造影で左前下行枝と右冠動脈に狭窄を認め経皮的冠動脈形成術を施行し再発なく経過している。症例2は80歳男性。低用量アスピリン内服中に血便をきたした。高度の貧血を認め,狭心症発作をきたした。心筋シンチグラフィで前壁中隔の虚血と診断した。高齢のため血圧管理のみで再発なく経過観察している。今後ますます増加が予想される抗血小板薬による消化管出血は重要な問題であり,プロトンポンプ阻害薬やH. pylori除菌療法による予防が推奨される。また,急激な貧血の進行は虚血性心疾患の発生閾値を低下させるため,抗血小板薬起因性消化管出血を診る際には虚血性心疾患発症のリスクをつねに念頭に置く必要がある。
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© 2012 日本腹部救急医学会
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