2012 年 32 巻 4 号 p. 751-755
当院では2005年以前,急性虫垂炎は保存治療を原則としていたが,2006年に腹腔鏡下虫垂切除術を導入後,カタル性虫垂炎,腫瘤形成性虫垂炎以外は積極的に手術を行う方針に転換した。1997年から2010年9月までの急性虫垂炎症例1,290例を対象とし,保存治療完遂群,保存治療から手術への移行群,および来院時手術群の成績を検討した。また,開腹手術と腹腔鏡下手術の成績を比較検討した。平均在院日数は,保存完遂群と腹腔鏡下手術群が6.9日と最短であった。しかし,保存完遂群に15日以上の長期入院を要する例を7%に認めた。手術移行群,手術群とも,腹腔鏡下手術は開腹手術と比べ,在院日数は短い傾向にあり,術後合併症も少なかった。よって初回治療としての腹腔鏡下手術は妥当と思われた。高度炎症例に待機的腹腔鏡下手術を行った場合,在院日数は短く,術後合併症もなく,高度炎症例の治療の選択肢となり得ると思われた。