2012 年 32 巻 5 号 p. 881-886
【目的】急性腹症における腹腔鏡下手術の有用性と限界について検討した。【対象・方法】急性腹症に対して腹腔鏡下手術を施行した(以下,Lap群)236例と,同時期に開腹術を施行した(以下,Open群)254例を術前診断により腸閉塞,消化管穿孔,急性虫垂炎,術前診断不明な急性腹症(以下,不明例)に分類後,腹腔鏡下診断確定率,手術術式,手術時間,術後合併症について検討した。【結果】腹腔鏡下診断確定率は91.1%で,うち71.6%が診断後完全鏡視下に治療可能だった。主な開腹移行理由は著明な癒着や腸管壊死だった。平均手術時間はLap群104.0±46.3分,Open群65.3±34.6分で,術後合併症はLap群21.6%,Open群19.3%であった。【結語】診断から治療へと移行できる腹腔鏡下手術は,急性腹症において有用であるが,強固な癒着例や腸管壊死例では腹腔鏡下手術の継続には限界がある。