抄録
当院の若手Acute Care Surgeon (ACS)の施行した手術症例から,若手ACS医に必要とされる手術を検討した。【方法】過去2年間に当院救命センターに所属する3名のACS医の術者となった症例を電子手術台帳から抽出した。術式(特に腹腔鏡手術),手術開始時刻,上級医の参加の有無を検討した。【結果】1名のACS医の1年間の術者数は164例で緊急が116例であった。腹部救急手術では,虫垂炎が半数を占め,次に下部消化管穿孔,イレウスとつづいた。外傷は6例と非常に少なかった。虫垂炎に対して開腹虫垂切除が96%に施行され,腹腔鏡下虫垂切除術は4%と少なかった。上部消化管穿孔では,54%に腹腔鏡下大網被覆術が施行された。胆嚢炎の手術では60%に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。手術開始時間は夜勤帯が多く62%を占めていた。上級医師が手術に参加したのは15%と少なく,胆嚢炎では42%の症例で,外傷では約半数で上級医がコールされていた。【結語】若手ACSに必要な手術手技のうち一般外科緊急では虫垂切除術,下部消化管穿孔,イレウス手術。上部消化管穿孔では開腹および腹腔鏡下大網被覆術,胆嚢炎では開腹・腹腔鏡下胆嚢摘出術が必要と考えられた。なお体幹部外傷手術は症例数が少なく,特殊外傷手術もあるので上級医の指導のもと施行すべきである。