抄録
当院で過去10年間に経験した小児腹腔内臓器損傷の23症例27部位について治療経過をまとめ,最適な治療戦略について考察した。小児腹腔内臓器損傷症例においてもIVRは安全に施行可能であった。IVR施行群は非施行群と比較して有意に高い重症度が認められたが,IVR施行群のなかでTAE施行群と非施行群の重症度は両群間に有意差は認められなかった。しかし,TAE施行群は非施行群と比較して血管造影室搬入までの所要時間が有意に短く,さらに前医との連携でより迅速なTAEの施行が可能であった。小児腹腔内臓器損傷に対しては迅速かつ的確な判断が求められる。そのためには,救命救急医,小児外科医,放射線科医がそれぞれの専門知識と技術を終結し診療にあたることが肝要である。また,緊急時であっても24時間対応可能な組織づくりが必要である。