抄録
腹部鈍的外傷による胆嚢の単独損傷はまれであるが,そのなかでも胆嚢壁内血腫の報告は数例のみである。報告例では,いずれも手術が選択されていたが,今回われわれは保存的治療にて治癒した1例を経験したので報告する。症例は15歳の男子で,サッカーの試合中に転倒し,腹部を強打した。来院時のバイタルサインは安定しており,右季肋部に軽度の圧痛を認めたが,筋性防御などの腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査では軽度の肝胆道系酵素の上昇を認めたが,他の異常所見は認めなかった。腹部CT検査では胆嚢壁の浮腫状肥厚,壁内の高吸収を示す陰影を認め,胆嚢壁内血腫と診断した。臨床所見が安定していたため,保存的治療を行った。保存的治療で右季肋部の圧痛は消失し,検査所見の悪化も認めず,受傷後6日目に退院となった。受傷後1ヵ月のCT検査では,壁の肥厚は残存していたが血腫は消失していた。受傷後3ヵ月のCT検査では,異常所見を認めなかった。