2013 年 33 巻 1 号 p. 155-160
85歳男性。左季肋部痛を主訴に近医を受診し,左季肋下に拍動性の腫瘤を触知した。腹部CT検査で径25mm大の脾門部仮性動脈瘤と左横隔膜下に内部に出血を伴う多房性嚢胞性病変を認めた。膵仮性嚢胞内への脾仮性動脈瘤の切迫破裂を疑い,当院へ救急搬送された。緊急IVRにて脾仮性動脈瘤の破裂所見を認め,脾動脈分枝をcoil塞栓した。腹部症状は軽快し,3週間後に開腹術を施行した。凝血塊の充満した多房性の膵仮性嚢胞を膵体尾部・脾臓とともに摘出した。病理組織学的には膵管上皮に異型増殖はみられず,慢性膵炎に合併した膵仮性嚢胞への脾仮性動脈瘤穿破と診断された。術後18日目に退院となり,28ヵ月後の現在,膵仮性嚢胞の再発なく社会復帰している。脾仮性動脈瘤穿破による仮性嚢胞内出血に対しては,動脈塞栓術による治療後に待機的根治的手術を行うことが良好な治療結果につながる。