日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
33 巻 , 1 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
原著
  • 皆川 幸洋, 下沖 収, 遠野 千尋, 藤社 勉, 高橋 正統, 阿部 正
    2013 年 33 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    腹部外傷のなかで最も治療成績が不良な損傷は鈍的外傷による重症型肝損傷,つまり日本外傷学会肝損傷分類の複雑深在性損傷(以下,IIIb型肝損傷)とIIIb型肝損傷に旁肝静脈損傷合併例(以下,IIIb+JHV)である。岩手県沿岸北部おいて過去10年間に24例の外傷性肝損傷例を経験したのでIIIb型重症肝損傷に対する治療戦略を中心に検討を加え報告する。当院において非手術的治療(Non-operative management:以下,NOM)を20例trasarterial embolization(以下,TAE)は2例に行い,4例に手術的治療を行った。24例の外傷性肝損傷例の検討に基づいて検討すると当施設のような過疎地域にある救命救急センターにおいて重症肝損傷に対する治療戦略として重症外傷対応チームの育成Japan Advanced Trauma Evaluation and Care(以下,JATEC)受講歴のある消化器外科医,IVR対応に精通した放射線科医,重症外傷管理に精通した麻酔科医,Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care(以下,JPTEC)受講歴のある看護師などによるチーム,ドクターヘリコプター利用による病院前治療の充実,セルセーバー®など自己血回収装置の積極的利用が肝要と考えられた。
  • 中村 伸理子, 山下 裕一, 佐々木 隆光
    2013 年 33 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    急性腹症に関する裁判は少なくない。胆石症・胆嚢炎,急性膵炎,絞扼性イレウス,虫垂炎について直近10年間の裁判例を調査検討した。病院側有責事例は23例あり,過失は,検査・診断6例,手術時期3例,治療・処置5例,手術手技5例および術後管理5例等であった。裁判では,書証や鑑定等をもとに医療水準が認定される。今回の調査では,書証として,「急性膵炎の診療ガイドライン」,「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」が用いられていた。ガイドラインを念頭に置いた診療が重要である。鑑定が行われている事例では,鑑定結果に沿った医療水準が示されており,鑑定の質の維持ならびに向上が望まれる。
  • 佐藤 美信, 升森 宏次, 小出 欣和, 野呂 智仁, 本多 克行, 塩田 規帆, 松岡 伸司, 前田 耕太郎
    2013 年 33 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    大腸癌穿孔の臨床病理学的特徴について非穿孔例と比較し,その治療方針を検討した。穿孔例(15例)は他臓器浸潤例,高度静脈侵襲(v3)例の割合が非穿孔例に比べて有意に高率で,stageIV症例が多い傾向にあった。穿孔部位は癌部7例,癌口側7例,肛門側1例であった。根治度A手術は9例で施行されたが(一期切除5例,二期切除4例),二期手術では一期切除に比べて手術時間は長く,出血量は多かった。stageIIの1例(25%)とIIIaの3例(100%)で再発を認め,穿孔に伴う腫瘍細胞の散布に関係する腹膜播種や皮下再発を4例に認めたが,根治度B手術後に再発した1例を含む4例で血行性またはリンパ行性の再発を認めた。根治度A症例のうち非再発例の郭清リンパ節数は平均19.8個で再発例の6.3個に比べて多い傾向にあり,全身状態が許す限り,積極的な一期的切除と十分なリンパ節郭清が血行性,リンパ行性再発を予防し,予後改善に寄与することが期待された。
  • 横江 正道, 梅村 修一郎, 林 克巳, 折戸 悦朗, 真弓 俊彦
    2013 年 33 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    平成22年の厚生労働省難治性膵疾患研究班の報告によれば,わが国における急性膵炎の診療に対してDPC対象病院では,赤字収支になることが報告された。とくに重症急性膵炎を受け入れている3次救命救急センターでは多くの医療資源を投入しての救命治療に比して,DPCでは赤字になりやすいことが指摘されていた。そこで,今回,急性膵炎の治療現況と重症度,出来高算定額,DPC算定額を比較することで,DPCによる急性膵炎の収益の実態を検討した。対象はコード病名が急性膵炎であった39例とした。厚生労働省重症度判定基準(2008)によって重症度を評価すると,軽症は31例(79.5%),重症は8例(20.5%)であった。収支が黒字であった症例は16例(41.0%)で,23例(59.0%)は赤字であった。赤字症例は,軽症31例中16例,重症8例中7例であった。平均在院日数別に収支を検討すると黒字例が11.8日であったのに対し,赤字例では22.7日と長い傾向にあった。黒字例の平均収支は29,954.3円の増収であった一方で,赤字例の平均収支は225,388.3円の損失であった。結果として,重症例で赤字になる可能性が高く,在院日数が長い方が赤字になりやすいことが分かった。また,赤字例では,手術や画像診断などに費用をかけていた。急性膵炎は,軽症と重症では病態や投入する医療資源も大きく異なるため,今後のDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)の変更が必要である。
特集:腹部救急疾患に対する内視鏡外科手術
  • 秋山 岳, 植松 大, 大久保 浩毅, 河合 俊輔, 長谷川 健
    2013 年 33 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    大腿ヘルニア嵌頓イレウスの緊急手術では,しばしば腸管切除を要する。これまで腸管切除症例では術後感染を懸念し meshを用いないヘルニア修復を施行することが一般的であった。しかし,嵌頓のない待機手術症例のヘルニア修復に meshが有効であることから,感染の懸念が同等であれば,腸管切除症例にも meshを用いた修復が望ましいことは明らかである。当院では大腿ヘルニア嵌頓イレウス症例に対し内視鏡外科手術を用いることで,低侵襲かつ全症例に meshを用いた修復を行う治療戦略をとっているので報告する。まず鏡視下に腸管切除の要否を確認し,必要な症例では臍の創を延長し腸管切除を行う。閉創して腹腔操作は終了し,ヘルニア修復は術野消毒を含めた準備をやり直し,前方アプローチで腹膜を損傷せずに行う。このことにより,meshと腸管切除が行われた腹腔には腹膜が介在し感染の riskは最小限になると考えられた。
  • 吉川 征一郎, 福永 正氣, 李 慶文, 永仮 邦彦, 菅野 雅彦, 須田 健, 飯田 義人, 伊藤 嘉智, 大内 昌和, 勝野 剛太郎, ...
    2013 年 33 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    下部消化管病変に対する内視鏡治療は有用な低侵襲治療であるが,低率ながら消化管穿孔の危険を伴う。われわれは一定の基準に基づき医原性大腸穿孔に対し腹腔鏡下手術を適応している。2012年3月までに施行した腹腔鏡下大腸切除術(Laparoscopy assisted colectomy:以下,LAC)1,764症例のうち医原性穿孔は14例であった。手術時間は平均141分,平均術中出血量は68g,経口摂取開始は平均3.3日,経口摂取開始は3.3日,平均術後在院日数は17日であり,予定手術LAC群と比較して有意差を認めなかった。医原性大腸穿孔に対する腹腔鏡下手術は術後経過においても通常のLACと同様に良好であった。本術式の医原性大腸穿孔に対する適応は治療法として妥当であると考えられた。
  • 赤星 朋比古, 富川 盛雅, 川中 博文, 調 憲, 前原 喜彦, 橋爪 誠
    2013 年 33 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    胃上部血行遮断および脾摘術は,一般的に Hassab手術ともいわれるが,食道や胃の離断を行わず,胃周囲および食道下部の広範囲な血行遮断と脾摘を行う術式で,門脈圧亢進症に対する直達手術である。当科では,難治性の食道静脈瘤に対してより低侵襲性を求めた腹腔鏡下胃上部血行遮断および脾摘術を行ってきた。しかしながら,1,000g以上の脾腫症例や,側副血行路の著明に発達した症例においては,腹腔鏡下手術のみでは,術中出血により開腹手術に移行せざるえない症例もある。そこで,そのような症例においては用手補助下(Hand assisted laparoscopic surgery)に胃上部血行遮断および脾摘術を行うようにしている。これにより出血量の軽減することができ開腹移行例も少なくなった。術後の食道胃静脈瘤の消失効果は高く,内視鏡や IVR不能例に対して本術式は有用であると考えられる。
  • 清水 正幸, 山元 良, 松本 松圭, 船曵 知弘, 山崎 元靖, 北野 光秀
    2013 年 33 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    小腸閉塞(Small bowel obstruction:SBO)の診療において絞扼の有無は治療方針を決定する上で重要であり,絞扼性 SBOの場合は緊急手術を要する。絞扼性 SBOでも呼吸循環動態が安定しており,気腹下でWorking spaceが確保できる例において,腹腔鏡手術も選択肢となりうる。絞扼性 SBOの診断または疑いで緊急腹腔鏡手術を行った場合,その原因は単純なバンド(Single band)が最も多く,術式も容易なBand切離であることが多い。また,術前診断が絞扼性 SBOの疑いの場合,腹腔鏡を使用することで不必要な開腹を回避できる可能性もある。筆者らはSBOに対して緊急腹腔鏡手術を 29例に行っているが,開腹移行率は24%,合併症率は14%であり,術中腸管損傷は2例であった。これらの成績は許容範囲内と考えられ,SBOに対する緊急腹腔鏡手術は適応を限れば安全かつ有用である。
  • 池田 英二, 黒田 雅利, 辻 尚志, 平井 隆二, 高木 章司, 山野 寿久, 賀島 肇, 二萬 英斗
    2013 年 33 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    腹部救急例にこそ鏡視下手術が寄与すると考え大腸切除に応用している。対象は過去11年6ヵ月間の腹部救急疾患に対する腹腔鏡下大腸切除89例(腸閉塞69,腹膜炎17,出血2,虚血性腸炎1)。適応は待期例での適応に加え救急例では,腸閉塞は術前減圧で腹腔内操作腔が確保できる例,腹膜炎は限局性または汎発性なら全処置良好な医原性例,出血や腸虚血は血行動態,全身状態安定例に限った。手術は原則として待期例と同様の方法をとるが,救急例には特有の注意点があり,よく理解しておくことが肝要である。開腹移行率は2.2%,Pure laparoscopic surgeryは59.6%であった。腸閉塞で良性は10例で,腹膜炎,出血,虚血性腸炎例とも結果良好であった。癌性腸閉塞は59例で開腹大腸癌腸閉塞例と比較すると手術成績,癌の予後とも良好であった。 安全に適応を選べば腹部救急疾患に対する腹腔鏡下大腸切除術は有用である。
  • 石山 泰寛, 稲木 紀幸, 小竹 優範, 黒川 勝, 伴登 宏行, 山田 哲司
    2013 年 33 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    はじめに:近年腹腔鏡下手術は急速に普及しており,緊急手術時に対しての適応も増加している。対象:2007年1月から2011年12月までに当院で緊急手術に対して腹腔鏡下手術を施行した症例を対象とした。結果:腹腔鏡下手術を行った症例は269例であった。内訳は,腹腔鏡下手術は急性虫垂炎が202例,イレウスは24例,消化管穿孔が37例,その他6例であった。腹腔鏡下手術の割合を年別にみると,2007年は18.9%,2008年は36.2%,2009年は68.9%,2010年は69.3%,2011年は76.3%であり年々,腹腔鏡下手術の割合は増加していた。結語:腹部救急疾患に対しても腹腔鏡下手術を導入し,安全で良好な結果が得られた。今後も腹部救急疾患に対する腹腔鏡下手術の適応が拡大することが期待される。
  • 城田 哲哉, 山口 拓也, 南原 幹男, 浅井 哲, 森 琢児, 小川 稔
    2013 年 33 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    【目的】当科では以前より急性腹症に対する腹腔鏡手術の適応除外基準を設け,積極的に腹腔鏡手術を施行している。今回,急性腹症を呈した小腸疾患に対する腹腔鏡手術の有用性につき報告する。【対象】2008年10月から2012年1月までに急性腹症を呈し外科的処置を要した小腸疾患23例に対し,診断,手術術式,合併症などについて検討した。【結果】手術時に腹腔鏡下にて確定診断を得た症例は16例であった。外科的処置に関し,完全腹腔鏡手術7例,腹腔鏡補助下手術10例,開腹移行手術6例であり,開腹移行の原因は腸管拡張や癒着による視野不良が多くを占めた。術後合併症を4例に認めたが,腹腔鏡手術に関連するものは認めなかった。【結語】急性腹症を呈した小腸疾患に対する腹腔鏡手術は適応除外基準を用いることにより責任病変の同定に有用であり,外科的処置においても低侵襲かつ安全に施行し得ていた。
症例報告
  • 西田 保則, 高橋 祐輔, 笹原 孝太郎
    2013 年 33 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性,下腹部痛と嘔気を主訴に来院。腹部CTで拡張した小腸と,左下腹部にclosed loopを認めた。同部位での絞扼を疑い,緊急手術を施行した。腹腔鏡で観察すると,S状結腸間膜と壁側腹膜の癒合部に陥凹部があり,S状結腸間膜窩ヘルニア嵌頓による絞扼性イレウスと診断した。鏡視下に嵌頓を解除し,ヘルニア門を縫合閉鎖した。腸切除は行わなかった。術後経過に問題なく,第6病日に退院となった。S状結腸間膜に関連した内ヘルニアは比較的まれであり,術前診断は困難な症例が多い。絞扼性イレウスと判断し手術を施行し,腹腔鏡下に早期診断,治療できたS状結腸間膜窩ヘルニアによる絞扼性イレウスの1例を経験した。
  • 鈴東 昌也, 東本 昌之, 東 泰志, 竹林 勇二, 小倉 修
    2013 年 33 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    瓶類は本邦で最も頻度の高い経肛門的直腸内異物である。今回われわれは,気動式骨手術器械(サージエアトームII)を用いて,経肛門的に安全に摘出し得た直腸内異物を経験したので報告する。症例は51歳男性。自慰行為中,ヨーグルトのガラス瓶を肛門に挿入した。自力で摘出できず,当院救急外来受診した。直腸診で肛門縁より5cmに瓶底を触知した。腰椎麻酔で肛門括約筋を弛緩させ,用手および筋鈎でガラス瓶摘出を試みたが,摘出困難であった。気動式骨手術器械で瓶底に直径5mm大の穴を作製し,直角鉗子を掛けて摘出した。瓶の最大直径は8cm,長さ9cmであった。術後合併症は認めなかった。今回用いた方法は,経肛門的直腸異物摘出法の一つとして有効であり,今後同様の症例に対して,有用な方法であると考えられた。
  • 田中 肖吾, 石原 寛治, 倉島 夕紀子, 大野 耕一, 山本 隆嗣
    2013 年 33 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    患者は86歳,女性。以前から左鼠径ヘルニアを自覚していたが放置していた。また認知症があり食べ物を飲み込む習慣があった。平成23年10月発熱を主訴に来院。触診上,腹部全体に圧痛および筋性防御を伴っていた。左鼠径ヘルニアは疼痛もなく用手還納は可能であった。血液検査上著明な炎症所見の亢進を認めた。腹部CT像上,わずかな遊離ガスおよび左鼠径ヘルニアを認めたが,穿孔部位は同定できなかった。また異物の描出も認めなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹したところ,Douglas窩膿瘍の中に爪楊枝を認め,左鼠径部に陥入していた小腸に穿孔部位を認めたために小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後6日後に鼠径ヘルニア修復術を施行した。その後家人より受診2日前に作った串揚げにつかった爪楊枝と串が数本無くなっていたとの報告をうけ,術後8日後にCTを撮影したところ,盲腸に線状の高吸収域を認めたため遺残異物と診断した。線状高吸収域は術後13日後には横行結腸に移動していた。術後15日後に大腸内視鏡を施行したところ横行結腸に串を認め,摘出した。経過良好で術後22日後に退院となった。異物誤飲に対しては詳細な病歴聴取と術後症状がなくても遺残がないかCT検査を行うことが重要と思われた。
  • 佃 玄紀, 横山 登, 磯崎 正典, 松尾 海, 野垣 航二, 保母 貴宏, 有馬 秀英, 相田 貞継, 清水 浩二, 熊谷 一秀
    2013 年 33 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性。重度の下痢と低栄養状態および歩行困難にて救急病院に搬送され,上部消化管内視鏡検査,注腸検査で胃横行結腸瘻が疑われ当院紹介入院となった。上部消化管内視鏡検査では,胃角部後壁に瘻孔を認め,結腸への内視鏡の挿入が容易であった。また,瘻孔より盲腸,直腸の観察が可能であった。悪性を疑う所見は乏しく,病理組織学的検査においても悪性所見は認められなかった。以上より,胃潰瘍が横行結腸に穿通し瘻孔を形成したものと診断した。極度の低栄養を認めたため,中心静脈栄養,経腸栄養を施行するも改善認めなかったため,手術の方針となった。胃局所切除,横行結腸部分切除,小腸部分切除術を施行した。切除標本の病理組織学的検査結果でも,悪性所見は認めず,胃潰瘍による胃結腸瘻と診断した。今回,良性胃潰瘍を原因とする胃結腸瘻の1症例を経験したので,自験例を加えた本邦報告20例を集計し文献的考察を加えて報告する。
  • 大石 一行, 上月 章史, 公文 剣斗, 寺石 文則, 中村 敏夫, 福井 康雄
    2013 年 33 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は89歳の女性で,以前より直腸脱を指摘されていたが経過観察していた。頻回の肛門痛,腸管脱出,血便を認めて当科を紹介受診した。徒手整復を試み,腸管脱出部を直腸内に還納できたが,依然腫瘤を触知する状態であった。CTでは直腸内にS状結腸の先進部を認め,腸重積と診断して緊急手術を行った。S状結腸が先進部となって直腸S状部に進入して重積をきたし,先端は手拳大で,腹膜翻転部よりも肛門側に先進しており,術中に整復を試みたが困難であった。そのため正常腸管に切開を入れて整復を行った後にHartmann手術を施行した。病理組織検査所見は5型,高分化型腺癌,MP,ly0,v0,N0,StageIであった。術後経過は良好で術後20日目に転院となった。S状結腸癌が先進部となり肛門外へ脱出した腸重積症例は比較的まれであり,5型は初めての報告となる。
  • 鈴木 和志, 宇野 雄祐, 河原 健夫
    2013 年 33 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    再発性S状結腸軸捻転症に対し,単孔式に腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した2例を経験したので報告する。症例1:67歳,男性。腹痛を主訴に受診した。腹部単純X線とCTにてS状結腸軸捻転症と診断し大腸内視鏡下に整復した。退院5日後に軸捻転が再発し再び内視鏡下に整復した。再発性S状結腸軸捻転症のため手術適応と判断し,臍部の小切開創より単孔式にS状結腸切除術を施行した。第10病日に軽快退院した。症例2:55歳,男性。1年半前にS状結腸軸捻転症で他院にて入院治療歴あり。腹痛を主訴に受診し,S状結腸軸捻転症と診断し内視鏡下に整復した。再発性S状結腸軸捻転症のため手術適応と判断し,臍部の小切開創より単孔式にS状結腸切除術を施行した。第7病日に軽快退院した。本症に対する単孔式手術は特別な機器の導入も必要なく安全に施行可能であり,治療選択肢の一つになりうると考えられた。
  • 今井 彰子, 唐木田 真也, 佐々木 俊雄
    2013 年 33 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性。右下腹痛を主訴に当院に搬送された。経腟超音波,腹部CT,骨盤MRIにて両側卵管留水腫を認めたが,腹部所見では右下腹部に軽度圧痛を認めるのみで腹膜刺激症状はなかった。同日入院,抗菌薬による保存的治療を開始した。しかし,効果に乏しく,腹部症状および血液学的炎症反応が次第に増悪してきたため,第3病日に試験開腹術となった。開腹所見にて両側卵管水腫,右卵管捻転が認められたが,両側卵巣は正常であった。右卵管切除術,左卵管開口術および両側卵管周囲癒着剥離術を施行した。孤立性の卵管捻転による急性腹症は非常にまれではあるが,女性の急性腹症の原因の一つとして念頭に置く必要がある。
  • 良永 康雄, 宮部 明, 坂本 貴志, 片桐 秀樹, 窪田 忠夫, 溝上 賢, 宮崎 国久, 町 淳二
    2013 年 33 巻 1 号 p. 127-129
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性。1ヵ月前よりしばし腹痛,3日前より食欲不振あり。当日朝,衰弱のため救急搬送となった。来院時はショック状態で腹部はやや膨満し上腹部を中心に圧痛と反跳痛,筋性防御あり。腹部CTで網嚢内に不整なガス像と液体貯留を認めた。網嚢へ穿破した消化管穿孔と敗血症性ショックの診断で緊急開腹手術を行った。網嚢を開放すると十二指腸球部から横行結腸脾彎曲部に至る膿瘍を認めた。消化管に明らかな穿孔部位を同定できなかったが,術中血圧が不安定でそれ以上の観察はできず,網嚢ドレナージ術を施行するにとどめた。術後上部消化管内視鏡で十二指腸球後部に潰瘍を認め,ドレーンからのチューブ造影で網嚢と十二指腸球部に交通を認めた。網嚢膿瘍は比較的まれな病態だがその多くは膵由来であり十二指腸潰瘍穿孔による報告はさらにまれである。文献的考察を加えて報告した。
  • 岩田 力, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 前田 敦行, 高山 祐一
    2013 年 33 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    術前CT検査にて両側同時性閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し得た2症例を経験した。症例(1)は83歳女性で,腹痛と嘔気を主訴に受診し,CTで両側閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断。緊急手術所見ではバウヒン弁から口側約30cmの回腸が左閉鎖孔に,そこから口側約30cmの回腸が右閉鎖孔に嵌頓していた。両側ともにRichter型ヘルニアで腸管壊死を認め,小腸部分切除術を施行した。ヘルニア門は卵巣を用いて閉鎖した。症例(2)は79歳女性で,嘔気と繰り返す右鼠径部痛を主訴に受診し,CTにて両側閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した。緊急手術所見ではバウヒン弁から口側約120cmの回腸が右閉鎖孔に嵌頓。Richter型ヘルニアで腸管壊死を認め,小腸部分切除術を施行した。左側は自然に還納されていたが,右側嵌頓部より口側約50cmの回腸に発赤を認め,嵌頓部と思われた。両側のヘルニア門に腹膜外腔にMesh plugを挿入した。
  • 日高 匡章, 松尾 光敏, 須藤 隆一郎, 村上 隆一, 赤岩 慶, 岡崎 充善, 宮崎 健介, 善甫 宜哉
    2013 年 33 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    81歳女性,2日前より鼠径部膨隆を認め,当院受診となった。鼠径部に約10cm大の皮膚壊死を伴う膨隆を認め,血圧70mmHg台,脈拍128/分,白血球,CRP上昇を認めたが,アシドーシスは認めなかった。CTで左大腿ヘルニアに伴う鼠径部膿瘍が疑われ,緊急手術となった。膿瘍内では大腿輪よりヘルニア嚢を認め,Richter型嵌頓,小腸穿孔を認めた。鼠径靱帯を切離後,小腸嵌頓を解除,穿孔部位の小腸切除を行った後,大腿輪を直接縫合閉鎖した。壊死組織をデブリードマン後,外側大腿回旋動脈下行枝による有茎前外側大腿皮弁を用いて組織欠損部を修復した。術後ICUにて集中治療後,術後2日目ICU退室,その後も経過良好で術後39日で退院した。前外側大腿皮弁再建術は広範囲皮膚欠損を伴う鼠径部膿瘍に対して有用な術式と思われる。
  • 川井 廉之
    2013 年 33 巻 1 号 p. 141-144
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    Morgagni孔ヘルニアは比較的まれな横隔膜ヘルニアである。近年低侵襲な腹腔鏡下修復術の報告が散見されるが,今回再発Morgagni孔ヘルニアにexpanded polytetrafluoroethylene(以下,ePTFE)シートを用いた腹腔鏡下修復術を行い良好な結果を得たので報告する。症例は73際の女性。8年前にMorgagni孔ヘルニアに対して腹腔鏡下に縫合修復術を受けた。今回,検診の胸部X線写真で異常を指摘され当院に紹介となった。胸腹部CT検査にて大網をヘルニア内容とするMorgagni孔ヘルニアの再発と診断し,腹腔鏡下に修復術を行った。ヘルニア門の周囲は脆弱であり,門の大きさに合わせて形成したePTFEシートを用いてパッチ修復を行なった。鏡視下手術において,ヘルニア門の修復にePTFEシートを単独で用いた報告はない。本シートは自由に形成でき,固定が最小限ですみ鏡視下ヘルニア修復術に有用と思われた。
  • 久保 直樹, 佐藤 敏行, 花岡 孝臣, 岩谷 勇吾
    2013 年 33 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は92歳男性。大腿骨頸部骨折で入院中,腹痛,嘔吐が出現し,血液検査で炎症反応の上昇を認めた。CT上,胃壁内から肝内門脈にかけてガス像を認めた。上部内視鏡検査を施行したところ胃体部大彎の皺壁腫大,白苔の付着したびらん,発赤を認め急性胃蜂窩織炎と診断した。胃粘膜組織培養からEnterococcus faecalisとStaphylococcus hominisが検出され絶食,抗生剤投与を行い保存的治療で改善した。胃蜂窩織炎に門脈ガス血症を伴うことは極めてまれである。保存的治療で改善した門脈ガス血症を伴う胃蜂窩織炎を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 小林 建太, 大槻 将, 細矢 徳子, 村瀬 秀明, 上田 吉宏, 円城寺 恩, 石丸 神矢, 本山 一夫, 大野 玲, 横畠 徳行, 小畑 ...
    2013 年 33 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は開腹既往のない28歳,女性。突然の嘔吐,腹部膨満で発症し近医へ腸閉塞の診断で入院となった。経鼻胃管で減圧をしたが増悪し,絞扼も疑われたため,翌日当院へ搬送された。造影CTでは著明な小腸の拡張と,回腸遠位部に狭窄部と思われる所見を認めた。血流障害はないと判断し,イレウス管で腸管減圧を行った。イレウス管からの排液は連日2,000mL以上認めた。第5病日のイレウス管造影では腸管は減圧されていたものの,回腸末端と思われる部位に狭窄を認め,造影剤の通過は不良であった。保存治療に抵抗性と判断し,第6病日に手術療法に踏み切った。腹腔鏡観察では一塊となった回盲部を認め,子宮内膜症による癒着と診断し,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。病理診断において子宮内膜症による癒着性腸閉塞と確定診断した。術後経過は良好で術後7日目に退院した。腹腔鏡手術は腸閉塞の診断,治療に有効であると思われた。
  • 神藤 修, 鈴木 昌八, 落合 秀人, 宇野 彰晋, 深澤 貴子, 松本 圭五, 中村 昌樹
    2013 年 33 巻 1 号 p. 155-160
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    85歳男性。左季肋部痛を主訴に近医を受診し,左季肋下に拍動性の腫瘤を触知した。腹部CT検査で径25mm大の脾門部仮性動脈瘤と左横隔膜下に内部に出血を伴う多房性嚢胞性病変を認めた。膵仮性嚢胞内への脾仮性動脈瘤の切迫破裂を疑い,当院へ救急搬送された。緊急IVRにて脾仮性動脈瘤の破裂所見を認め,脾動脈分枝をcoil塞栓した。腹部症状は軽快し,3週間後に開腹術を施行した。凝血塊の充満した多房性の膵仮性嚢胞を膵体尾部・脾臓とともに摘出した。病理組織学的には膵管上皮に異型増殖はみられず,慢性膵炎に合併した膵仮性嚢胞への脾仮性動脈瘤穿破と診断された。術後18日目に退院となり,28ヵ月後の現在,膵仮性嚢胞の再発なく社会復帰している。脾仮性動脈瘤穿破による仮性嚢胞内出血に対しては,動脈塞栓術による治療後に待機的根治的手術を行うことが良好な治療結果につながる。
  • 向井 正一朗, 先本 秀人, 河内 雅年, 清水 誠一, 藤崎 成至, 福田 三郎, 有田 道典, 江藤 高陽, 高橋 信
    2013 年 33 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 2013/01/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    症例は,40歳代男性。急激に発症した心窩部痛を主訴に,救急搬送された。造影CT検査にて,左腎頭側に径10cm大の一部被膜を保持した腫瘍と血腫を認め,内部に造影剤の流出があり,左副腎腫瘍破裂による後腹膜出血と考え,血管撮影検査を行った。中副腎動脈からの造影剤の流出を認めたが,造影中に血圧の不安定性を認め,褐色細胞腫を疑った。褐色細胞腫では,塞栓術が禁忌との報告があるため保存的加療を行ったが,腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS)も併発したため,止血・減圧が必要と判断し塞栓術を施行後,緊急手術を施行した。永久病理組織学的検査で,褐色細胞腫と診断された。術後は集学的治療を行ったが,第6病日に死亡した。副腎褐色細胞腫の自然破裂例は極めてまれな疾患であり,その予後は不良である。今回われわれは,急速な転機をたどった副腎褐色細胞腫破裂の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
feedback
Top